「例えば『破壊活動防止法』で対象になるのは、過去に暴力主義的破壊活動をしていて将来も暴力を行使する可能性がある団体と限定しています。
しかし今回は“集団の周辺者”や2人以上の集団で組織的犯罪を計画していると警察から判断された場合、対象になってしまいます」
つまり、過去に何も起こしていない「一般人」が対象になることも考えられる。
「“テロを警戒するため”という名目で、警察が恣意的に一般人の携帯電話を盗聴したり、メールや個人のSNSの内容、ネットの書き込みなどを監視することもありえます。
テロ集団が携帯やメールを使って共謀せずにアジトに集まることも考えられるので、これまで許されていなかった“室内盗聴”の話も浮上すると思います」(青木氏)
この法律は“悪法”
国会審議で政府側は“通信傍受”を共謀罪で使用することはないと答弁していたが、計画段階の犯罪を取り締まるとなれば「盗聴」は必要不可欠な方法のはず。もしそうなれば、日本が「監視社会」になりかねない……。
さらに青木氏は“冤罪”の原因にもなりうると話す。
「隣人が“密告する”可能性も当然あるでしょう。いつもマスクやサングラス姿で怪しかったり、いつもポストに市民運動のビラが入っているなどの“不確かな情報”で通報されるかもしれません。
今回は“自主減免規定”といって、組織的犯罪を自主的に明かした場合、本人の刑罰が減免されるので“自分が助かりたい”“あの人を貶めたい”と考える人も現れるでしょうね」
通常のすでに起こった事件であれば、捜査をして証拠を集めるなどして犯人を捜すことができるが、そうではない『共謀罪』を取り締まるには“告発”に頼らざるをえなくなることもあるだろう。
国民の「自由」を奪うことにつながる法律にひるんで、「活動自粛」をしてはならないというのは海渡弁護士。
「この法案は“悪法”だと思いますが、成立したからといって市民のみなさんは団体行動を“自粛”しないでほしい。このまま黙ったままでいると政府の思うつぼです。
法律に十分に注意をしながらも、今までどおりひとりひとりが声をあげていくことが大切です。私たち弁護士も、みなさんが安心して活動できるようなサポートグループを作ろうと思っています」
青木氏も「自粛する社会になってほしくない」と語る。
「極端にいえば、政治的関心がなくデモや集会にも参加せず、市民団体などにも所属していない人なら監視の対象にならないでしょうが、そんな人ばかりの世の中でいいのでしょうか」(青木氏)
“問題山積み”の共謀罪を成立させた与党に対しても、疑問の声があがる。
「与党の議員の数が多いからと、強引に押し切られたら、どんな法案も通過してしまいます。与党を選んだのはわれわれ国民ですが、この機会に改めて今の体制に対する評価を見直すべきなのかもしれません」(政治ジャーナリスト)
“ターニングポイント”のタイミングが到来したのかもしれない─。