年上女性を称える欧州特有の世界観

 フランスには、ジョゼフィーヌとナポレオンという世界的な“姉さん女房成功例”があるだけに、ことさらブリジットさんの手腕に期待が集まる。

「ナポレオンしかり、もともとヨーロッパでは青年のお相手といえば年上……往々にして子持ちの既婚女性という構図は珍しくない」と続けるのは、歴史作家にしてフランス文学に明るい堀江宏樹さん。

「中世ヨーロッパの騎士道のロマンスが部分的に生きているとはいえ、当時の騎士道は基本的に肉体の愛はご法度。年上の貴婦人に騎士がプラトニックな愛を捧げるというスタイル。若い女性は結婚まで処女を守らなければならないという縛りのある社会だったので、恋愛は既婚女性だけが謳歌(おうか)できたわけです。それが転じて、年上の既婚女性が、若い男性に性教育を兼ねた性愛を教えるという構図ができあがったのです」(堀江さん)

 その一方で「“好き”だけでは結婚までこぎつけられないといった人生のホロ苦さを若い男性に教えるというところまでがセットだった」と堀江さんは語る。確かに、ブリジットさんは3人の子を持つ母親。しかも当時は長女がマクロンの同級生という。そんな状況を知った多感な年ごろだったら非行に走ってもおかしくないような状況。当然、周囲は大反対するわけで、実際にマクロンは両親によって150キロ離れた別の高校に転校させられる。

「ところがマクロンさんの場合は、古式ゆかしい恋愛スタイルを踏襲しながらも、最終的に結婚までこぎつけてしまった。現代っ子でありながら、最後まで貫徹する意志の強さは、政治家に必要な要素。もしかしたら歴史に残るような優れた大統領になるかもしれませんよ」(堀江さん)