信頼できる機関だと思ったら……

 この1年で、オレオレ詐欺以上に認知件数が著しく伸びているのが還付金詐欺だ。

「都内での被害状況をみると、昨年はすべての特殊詐欺のうち9%だったのが、今年1~4月の時点で22%を占めています。自治体の職員を装い、“払いすぎた医療費の過払い金の還付が受けられます”などとATM操作を電話で指示しながら、お金を振り込ませるのが主な手口です。

 最近では、発覚を防ぐために犯人が無人のATMを指定する事案も増えてきています」(山上警視)

 先月’16年の還付金詐欺被害が全国ワーストとなった大阪では、携帯電話で話しながらATM操作をしている70代女性を不審に思い声をかけ、電話を代わった警察官までもが騙され100万円を奪われるほど巧妙なケースも発生している。

「最近の傾向として、犯人は警察官に電話を代わってもまったく慌てたそぶりを見せず、丁寧な口調で話し続けます」

 と山上警視。悪びれもせず堂々と罪を犯す詐欺師に、捜査のプロまでもが騙されてしまうということか。それでも、「原則、自治体や銀行が、わざわざお金を戻す連絡をしてくることなどありません」(山上警視)とのポイントを押さえておけば、被害を未然に食い止められる。

 そして、むやみな親切は疑うに限る。今年5月、タレント坂上忍の母・淳子さんが「デパートなりすまし詐欺」の犯人逮捕にひと役買い、話題を集めた。

 突然、デパートの社員をかたる男から次々と「あなたのカードが不正に使われています」「銀行のキャッシュカードも危ない」と電話が入り、ひいては「キャッシュカードの暗証番号を変えなければ」「代行します、今から10分ほどで伺います」と言う。わざわざ、しかもすぐに来てくれるなんておかしいと気づいた淳子さんは警察に連絡した。

「警察官が淳子さんの自宅で待機。キャッシュカードを取りに来た受け子を現行犯逮捕しました」(山上警視)

 こうした“なりすまし”は警察、役所をかたる場合もあるため要注意。

とにかく電話に出ないが鉄則!

 対策としては、見知らぬ人からの電話には決して出ない! それに尽きる。

「かかってきた電話には出るものだと思っている高齢者は多い。でも、そこにつけ込まれる。留守番電話を設定しておき、見知らぬ番号は無視、知っている番号ならこちらからかけ直すように」(多田さん)

 警視庁も「犯人の 電話に出ないで 被害ゼロ」を呼びかけている。

「電話番号は携帯電話やフリーダイヤルの番号、さらに公的機関の番号に変えることもできますから、電話に出るのは登録した人だけにするのが安心。都内では電話を録音する旨を告げる『自動通話録音機』など防犯機能付きの電話機を貸し出している自治体などもあるので、ぜひ地元の自治体に聞いてみてください」

 万が一、おじいちゃんおばあちゃんが詐欺に遭ったとしても、それを責めたりバカにしたりしないことだと、多田さんは注意を促す。

「おかしいと思ったら、すぐ相談できる関係を築いていないと。家族に責められると、2度と口にできないと思ってしまい、傷心のまま次の詐欺に騙される危険性もありますからね」

【ココが怪しい!5大ポイント】
1 息子からの電話で上司や取引先が登場
2 「今すぐお金が必要」「誰にも言わないで」
3 電話ごしでATM操作の誘導
4 公的機関からの「お金を戻します」
5 デパートからの「カードが使われています」