4月23日、女優、タレントとして活躍した岡江久美子さんが新型コロナウイルスによる肺炎で、63年の生涯を閉じた。
彼女はこれまでに2本の長寿番組に関わった。昼ドラ『天までとどけ』('91年~'99年)と朝の情報番組『はなまるマーケット』('96年~'14年)。ともにTBS系の番組である。
岡江久美子さんが愛される理由
まず『天まで』は大家族モノのホームドラマとしてシリーズ化され、彼女は13人の子を持つ母親を演じた。その姿はいつも優しく元気なうえ「13人も子供を産んで、あんなに若々しくて綺麗でいられるわけがない」とツッコミを入れる人もいたほど、魅力的だった。それは、少子化が進む平成の世の中にあって、夢のような「お母さん」像だったともいえる。
そんな彼女は実生活でも母親業をこなした。そのあたりがそれまでの「日本のお母さん」と呼ばれた人たちとの違いだ。京塚昌子も山岡久乃も森光子も、子宝には恵まれず、そのイメージはもっぱらドラマやCMによって生まれたものだ。
彼女もドラマや映画で松本潤や上戸彩、東出昌大らの母親役を演じたり「ジキニンで、ジキになおって。」という決め台詞が印象的な風邪薬のCMに母親役で登場したりしたが、そこに加え、実生活でも母であることが強味だったのだ。
その強味は『はなまる』でも活かされることに。この番組はTBSがオウム真理教の事件に絡んだ不祥事によりワイドショーから撤退することになり、いわば急場しのぎで始めたものだ。スタートした秋、共同司会の薬丸裕英とともに改編期恒例の『オールスター感謝祭』(TBS系)に出演した彼女は「来年の春にはどうなっているかわかりません」と自虐的な発言で笑いをとっていた。それが17年も続いたのは、司会のふたり、特に彼女が妻として母としてのリアルな存在感を発揮し続けたことが大きい。