夫以外の精子で受精を行う手法が注目されているが、ドナーは不足。インターネットを通じて取引を行う人が増えている。今回取材に応じた女性も、SNSで出会った男性と性交渉を行い、無事に妊娠。しかしその後、彼の“ウソ”が発覚したという。男性に直撃すると―。
精子提供を受けたA子と、
精子提供をしたB氏の出会い
「最初の子どもが生まれてから10年以上、私たち夫婦は次の子どもを授かりませんでした。ずっと欲しかったんです。だから2人目が生まれて、本当に主人は喜んでいます。戸籍上は主人の子どもですが、実の子ではないんです……」
東京都内で暮らす30代のA子さんは声をひそめそう打ち明ける。白い素肌にストレートの黒髪のコントラストがとても清楚で、
「主人には内緒で精子提供を受けたんです」
という大胆な選択をした女性とはとうてい思えない。
夫との不妊に悩んでいたA子さんは、他人の精子を使った非配偶者間人工授精(AID)で2人目を出産することを決意した。生まれた子どもに夫の疑いの目が向かないよう、DNA検査さえしなければバレない外見、血液型、知能を持つ精子を求めた。
「夫と同じIQ130以上で、偏差値がトップクラスの大学に入れる子どもが欲しかった」
というA子さんが理想の精子探しに頼ったのは、インターネットの力だった。
生殖医療の実態に詳しい『はらメディカルクリニック』(東京・渋谷区)の診療部部長で医学博士の宮崎薫医師は、
「日本でAIDを行う医療機関はもともと少ないうえ、だんだん減っています。理由は精子提供者の情報開示の必要性が高まってきた点にあります。精子ドナーの方が将来特定されれば、養育費や扶養義務の話になりかねない。結果的に、法的規制のないネットで精子提供が行われているわけです」
と解説。A子さんがやがて出会うことになる精子提供者のB氏(20代後半)も、ネットの中にいた。
「ネットでの精子提供は今回が初めてでしたが、実は大学時代に、知人から精子提供を求められたことがあり、不妊症で困っている人の存在を知りました」
そう話し始めたB氏は'19年3月に、個人でも精子ドナーになれることを知り活動開始。フィギュアスケーターの羽生結弦選手にどことなく似たさわやか系のイケメンだ。
精子を求める女性と、精子を提供する男性。その先に命の誕生という重さは理解している。しかし、リアルより格段に相手の背景を知る手段が脆弱なネットの世界で出会い、つながってしまうのが現代社会だ。
2年前から精子提供マッチングサイト『ベイビープラチナパートナー』を立ち上げた運営者が、精子バンクの実情を明かす。
「SNSなどで精子提供の活動をされている方の情報を集めて紹介するというサービスを行っています。男性の登録者は現在100人以上、20代から50代まで幅広い年齢層です。無責任な男性を排除する意味でも、提供者からは登録料3万円をいただいています。男性には、マッチングした女性から謝礼を受け取ることを推奨していますが、個人の判断なので、無償で提供している方もいます。必ず女性から毎日1人、2人はご連絡をいただいていますね」