昨年、TBSからは『半沢直樹』(7月期)や『私の家政夫ナギサさん(「わたナギ」)』(同)などの連続ドラマのヒット作が生まれた。今年1月期はどうかというと、やはり滑り出しは好調だ。

『オー!マイ・ボス!恋は別冊で(「ボス恋」)』(火曜午後10時)の初回の世帯視聴率は合格水準の10%を超える11・4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)で2話は11・3%。『天国と地獄~サイコな2人~』(日曜午後9時)の初回は16・8%と高い世帯視聴率を記録した。

 なぜ、TBSドラマは強いのか。「伝統の力」とよく言われるが、テレビ東京を除くと、在京民放キー局のドラマ制作の歴史は大きくは違わない。TBSドラマの強さをロジカルに考えてみたい。

『わたナギ』が
高視聴率を得たワケ

 まずTBSの連ドラは準備期間が長い。放送までに通常、2年かけるという。他局は1年で作ることもある。その分、TBSドラマは内容が練りに練られている。

 例えば『ボス恋』は上白石萌音(22)扮する主人公・鈴木奈未と、玉森裕太(30)が演じる宝来潤之介によるキュンキュン系恋愛ドラマにとどまっていない。

都内で行われた『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(TBS系)のロケ
都内で行われた『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(TBS系)のロケ

 大学卒業まで故郷の熊本で暮らしていた奈未の「上京物語」でもある。就職先の音羽堂出版でファッション誌・MIYAVI編集部に配属されて、菜々緒(32)扮する編集長・宝来麗子にしごかれる「成長物語」の一面も。

 雑誌の表4(=裏表紙)とは何かなどをテロップまで使って説明する「お仕事ドラマ」の顔もある。基本的には奈未と潤之介の「ラブストーリー」なのだが、奈未の初期設定を天然でドジにすることで、「コメディ」の色合いも濃くしてある。

 さまざまなエレメントが詰め込まれている。これは最近の火曜午後10時枠の共通項。例えば『わたナギ』はコメディ色が濃かったものの、一方でナギサさん(大森南朋)がエリートサラリーマンから家政夫に転身するまでの心象風景を丁寧に描くことで、「幸福とは何か」という骨太のテーマも織り込まれていた。

 それもあって、ラブコメ適齢期をとっくに過ぎた中高年層の視聴者にも受け入れられ、高視聴率を得た。ラブコメ適齢期の10代から30代くらいまでの男女が見ただけでは高視聴率は得られない。企画段階からよく考えられていたので成功を収めた。