現在放送中の朝ドラ『おちょやん』。上方女優の浪花千栄子の生涯をモチーフに描いている。このドラマ、朝ドラファン以外、宝塚歌劇団のファンからも注目を集めている。映美くらら、明日海りお、木月あかり、星蘭ひとみ、湖条千秋。これまでの朝ドラに比べ、歌劇団のOGが多数出演しているのだ。
大阪制作はタカラジェンヌを
起用することが多い
「今回はNHKの大阪放送局が制作しているということが、理由のひとつにあると思います」
と、ドラマについてのコラムなどを多数執筆している田幸和歌子さんは話す。
「もともと大阪制作の朝ドラだと、元宝塚の女優さんを起用することが多い傾向にあります。関西という地元でのつながりがありますから。
また俳優さんだけでなく、『わろてんか』では高橋一生さんが演じた伊能栞のモデルが、宝塚歌劇団の創設者、小林一三さん。朝ドラと宝塚の親和性は強く感じますね」
ほかにも『おちょやん』では、演劇の世界が描かれていることも理由に挙げられるという。
「舞台女優さんが演じているから、作中の舞台シーンの芝居が自然に見えますよね。みなさん発声がしっかりしているので、ながら見をしていても登場した瞬間にふとテレビに視線を戻してしまいます」(田幸さん)
振り返れば、朝ドラには数多くのタカラジェンヌたちが出演している。'80年に放送された『虹を織る』は、紺野美沙子演じるヒロインが宝塚歌劇団に入団する物語だけあって、現役からも多くのジェンヌが出演した。
「ドラマの世界が宝塚なので、登場人物たちが舞台という夢に向かって、本当にキラキラしていて。でもそこには舞台に立つための地道な努力とかも描かれていて……。宝塚音楽学校の先生役で新珠三千代さんが出演されているんですけど、ヒロインが入学した初日の登場シーンが印象的でした。彼女の立ち姿は華やかでいて、その中に優しさがあって。憧れの世界を表現するにはぴったりだなと感じましたね」(田幸さん)
'03年の『てるてる家族』でも歌劇団がストーリーに絡んでくる。
「4人姉妹の長女を演じたのが、雪組でトップ娘役を務めた紺野まひるさん。ヒロインは石原さとみさんが演じた4女で、彼女が宝塚音楽学校に入学します。紺野さんはフィギュアスケートでオリンピックに出場しますが、設定が逆だったらもっと話題になったかも。この作品では登場人物が歌って踊る、ミュージカルのようなパートもありました。これが狙いで紺野さんをキャスティングしたのでしょう」(田幸さん)