石原さとみと綾野剛が主演を務める新ドラマ『恋はDeepに』(日本テレビ、水曜夜10時)がスタートした。これまで数多くのドラマ主演を務めてきた石原さとみに対して、一部からはこんな声が聞こえてきた。「石原さとみは何をやっても石原さとみーー」。“何をやっても〜”の代表格と言えばキムタクだが、石原さとみは本当にそうなのか? ドラマのプロはどう見るか。ドラマ評論家の吉田潮さんに聞いた。
「何をやっても同じに見える」は本当?
どんな役を演じても同一人物に見えるというのは、ある意味、役者として凄腕なのではないか? 事務所の戦略なのか、本人の希望なのか、作り手側の勝手な思い入れなのかは知らんが、専門特化・差別化を実現できるのは選ばれし者の証でもあり。
むしろ、いつのまにかその特色が「大物の風格」という扱いになり、伝説として語り継がれることもある。吉永小百合、沢口靖子、木村拓哉、深田恭子はもはや伝説というか、伝統芸能の域だし、米倉涼子やディーン・フジオカ、大谷亮平、有村架純に本田翼も、その背中を追っていると思われる。
この「何をやっても同じに見える」枠にエントリーされているのが、石原さとみらしい。え、そうなの? 垢ぬけないおぼこいもっさり娘役から着々と場数を踏み、ボリューミーな唇と媚びた可愛らしさを武器にしたせいか、一時期は女性票が低かった。
ところが、逆転現象が起きた。女性誌や美容雑誌の表紙を飾るほど垢ぬけて、いまや連ドラの主演級までのぼりつめた石原。個人的には、何をやっても同じとは思わないけれど、この10年でメインやレギュラーのキャラクターを演じるようになってからは定型のパターンがあるな、とは思う。
まず、「正」の石原。正しさやひたむきさ、当たり前にまっとうな感覚をもって共感を呼ぶ。もちろんドラマなので、ただの凡人ではない。それなりの能力や才能があったり、情熱や不屈の精神を持ち合わせていたりする。
『リッチマン、プアウーマン』(フジテレビ系・2012)では、東大卒で記憶力抜群だが就職できずに詐称しちゃったヒロイン、『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系・2016)ではファッション誌希望だが校閲部に配属された編集者役、『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(フジテレビ系・2020)では、医師よりも看護師よりも患者の人生にありえないくらい寄り添う病院薬剤師の役。そうそう、『アンナチュラル』(TBS系・2018)の凄絶な過去を抱えた法医解剖医役も、こっちかな。
正直、ここは「何をやっても石原さとみ」というよりも、誰がやっても同じ「連ドラによくある王道のヒロイン」でもある。綾瀬はるかでも新垣結衣でも吉高由里子でも違和感なし。連ドラのヒロインは、ほら、大手事務所の当番制だからさ。石原本人というよりは、テレビドラマ業界があえて定型ヒロインを作り出しているわけで。だから「何をやっても同じ」枠に入れられるのではないか。