すい臓がんにより、9月24日、84歳でこの世を去った漫画家のさいとう・たかをさん。驚きや悲しみとともに、多くの人の脳裏には、

「『ゴルゴ13』の最終回、どうなるの!?」

 ということが頭をよぎったのではないだろうか。

原作者が亡くなっても続く作品たち

 1968年11月の連載開始以来、同一漫画家による連載漫画として日本で4番目の長さを誇る人気長寿作品で、コミックスは202巻まで発売され、単一漫画シリーズ世界一として7月にギネス認定されたばかりだった。

 このような長寿作品につきものなのが、はたして最終回は無事に描かれるのかということ。『ゴルゴ13』も同様の話題にのぼることが多く、「最終回のプロットはすでに完成しており、下書きが金庫に厳重に保管されている」という都市伝説も流れるほどだった(これはさいとうさん本人が「私の頭の中にしかありません」とインタビューで否定している)。

 結果的にさいとうさんによる『ゴルゴ13』の最終回は描かれることはなくなったわけだが、連載中の『ゴルゴ13』、そして『鬼平犯科帳』の2作品については、以前からプロダクションによる分業制作制度が実施されてきたことを理由に、スタッフと編集部の協力体制での連載継続が発表された。

 これまでも、連載を抱える人気作品の原作者が、最終回を迎える前に亡くなり、多くのファンが悲しみに暮れるというパターンが多々あった。

 今年の5月に死去した三浦健太郎さんの人気作『ベルセルク』は、最新話が9月に発表されたものの、現時点で今後は「未定」だという。2009年に登山中に事故死しした臼井儀人さんの『クレヨンしんちゃん』は、残されていたストック原稿をもとに臼井さんの死後も数回掲載され、その後は元スタッフにより『新クレヨンしんちゃん』として新連載が開始され、現在に至っている。

「さいとう先生のように、残されたスタッフでストーリーも新たに考えながら引き継ぐというものは珍しいですね。さくらももこ先生の『ちびまる子ちゃん』は、生前に制作されたアニメ用の脚本をもとに、さくらプロダクションのスタッフが作画を担当し、《原作:さくらももこ》という扱いで、タイトルや話数も引き継ぎ、漫画雑誌『りぼん』に不定期掲載されています。『クレヨンしんちゃん』は別作品としての連載になり、藤子・F・不二雄先生の『ドラえもん』の漫画作品に関しては、キャラクターを用いた学習漫画や派生作品などが生前より執筆されていましたので、先生の描く原作とは区別された扱いですね」

 と、ある出版関係者は言う。では、テレビアニメの世界ではどうなのか。『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』『ちびまる子ちゃん』などは、作者の死後も放送は継続中だ。

アニメに関していえば『サザエさん』もそうですよね。このような日常系の短編作品は、長編ストーリーものと違い世界観さえ崩さなければ続けていくことができる。逆に、いつでもやめられるという側面もあります。特に民放の場合は、その作品にお金を出してくれるスポンサーがいるかぎり、ずっと続けていけるともいえます」(テレビ局関係者)

 作者独自の世界観や画風のクセが強く、ストーリー構成などの理由から継続不能な作品は、作者逝去後に引き継ぐことが難しくなり、未完となってしまうこともあるということだ。

「手塚治虫先生の『ネオ・ファウスト』や、石ノ森章太郎先生の『サイボーグ009』の完結編など、どれだけ気になっても読むことは叶わない作品もありますからね。現在、連載継続中の人気長寿作品も、やはり『最終回を読みたい!』という思いはそれぞれのファンの中にあるのではないでしょうか」(前出・出版関係者)

 存命中に描ききるか、ゴルゴや鬼平のように遺志をきっちり継ぐことができるか。はたまた最終回をあえて作らず受け入れてもらうか。ファンに夢を与えてくれる作品たちの最終回というのは「見たいようで見たくない、見たくないようで見てみたい」不思議な回なのかもしれない。

〈取材・文/渋谷恭太郎〉