「鶴橋(康夫)監督の作品は基本的に断りません。そして共演に宮沢りえさん、さらにはこの脚本で出演を決めました」
2夜連続放送のスペシャルドラマ 山崎豊子『女系家族』。今まで何度か映像化されてきた不朽の名作だ。
「だから、やりがいとともにプレッシャーを感じました」
演じるのは、大阪・船場で四代続く女系筋の老舗木綿問屋“矢島商店”の長女(総領娘)・矢島藤代。ある日、婿の当主であり、父である嘉蔵(役所広司)が総資産数十億円を残してこの世を去る。そして、矢島家の三姉妹の前に突如現れたのは嘉蔵の愛人・浜田文乃(宮沢りえ)。それぞれの思惑と意地のぶつかり合い、罵り合い。熾烈な遺産争いが繰り広げられる!!
寺島しのぶの“もっと欲しいもの”
「演じるのは楽しかったですね。藤代は“長女だからいちばんもらわなきゃ嫌!!”で。もともとの性格なのか、そういう教育を受けてしまったのか……。でも総領娘にそぐわない人物だから余計に順番に執着してしまう。しゃかりきに頑張るそのアンバランスさが、かわいそうだなあと思いますけどね」
遺言書では、三姉妹に平等に遺産を分け与えているように思えるのだが、藤代を筆頭に全員が疑心暗鬼に。
「父親からの愛の配分が額面、という部分もあるから余計わかりづらいし、ややこしい。ただ、自分の不服をあれほどまでに直球でガーッて言えるのは、なかなかいいなぁとは思いましたね(笑)。今の世の中、そんなに言えないじゃないですか。たとえ身内でも」
すでに十分持っているのに、もっともっと欲しい――。そんなものがあるかと尋ねてみると、
「絶対、お金ですよ!!」
と、即答。
「みんな同じですよ(笑)。“お金なんて別になくていい”なんていう人、いるのかな? 車でしょ、リフォームでしょ。お金がかかることはいろいろありますよ(笑)」
もちろんポンポンとは使わないが、“お金がある”と思うと安心して生活が送れると明るく笑う。
「遺産相続の話で、しかも早口な船場言葉なので難しかったですけど、それが必死に生きているさまを映せていると思います。それぞれの“人間の業”が見えるんじゃないかな。決して見て損はない作品になっていると思います」