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ー 東京都が「独法化」を急ぐ理由
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ー 東京から加速する公立つぶしの競争

 オミクロン株が猛威を振るう中、全国で最も感染者数の多い東京都で、コロナ医療を支えてきた公立病院が消されようとしている。「儲かる医療」を目指し、独立行政法人へと変えるため、2月16日からの都議会に廃止条例案が提出される見通しなのだ。東京から全国へ広がりかねない、「公立病院つぶし」の危機に迫る!

東京都が「独法化」を急ぐ理由

 新型コロナウイルス感染症から私たちの命を守ってきた公立病院が大ピンチに立たされている。都や国によって公的医療がつぶされるというのだから、おだやかではない。

 2月16日から始まる東京都議会に、都立病院条例の廃止案が提案される。8つの都立病院と6つの公社病院(※)を独立行政法人(以下、独法化※※)に変える内容で、可決されれば7月から実施される。

 そうなるとコロナ対応に支障をきたしたり、公的医療が「金持ちのためのビジネス」に変質しかねない。そんな懸念が都立病院で働く人たちや患者の間に広がっている。

 厚生労働省の調査によると、コロナ病床の確保数は、全国2287病院のうち1位の多摩総合医療センター以下、11位まで都立・公社病院が並んだ。コロナ下で重要性が浮き彫りになったのに、都はなぜ独法化を急ぐのか。

 独法化推進の論拠としてよく言われるのが、「都立病院は赤字体質で、都の一般会計から年間約400億円も繰り入れられている(資金が移されている)。独法化によって効率化し、都の支出を抑えるべき」という理屈だ。

 都立病院で働く看護師らが入っている労働組合『都庁職病院支部』の書記長で、自身も都立駒込病院で看護師をしている大利英昭さんは、「独法化を決めたのは、小池都知事の鶴のひと声だったのでしょう。職員への説明前に、NHKの知事インタビューで突然知らされました」と話す。

 大利さんたちの組合は研究者の協力を得て分析を進め、「400億円の繰り入れは赤字ではなく、不採算だが重要な周産期、難病、離島などの医療を維持するため、法律に基づいて出しているもの」と指摘すると、「変化する医療ニーズに柔軟、機動的に対応するため」と新たな理屈が持ち出された。都立直営だと議会で予算が決められ、人員の定数も細かく決まっているからスピーディーな対応ができないというのだ。もっともらしいが、大利さんは反駁(はんばく)する。

「コロナ感染が広がった際、都立・公社病院は数か月でコロナ病棟を増やし最新の人工呼吸器を入れ、ウイルスが飛散しないようにする工事も進めました。必要な費用は補正予算で手当てされました」

 独法化を進める理屈に疑問符がつく形だが、深刻な危惧もあると大利さんは続ける。

 独法化後の看護師の給与がどうなるかを病院支部が質問したところ、都立病院を管轄する東京都病院経営本部は「10年間、(現行の)都の制度での昇給を保障することを考える」との回答だった。11年以後はどうなるのか。

 独法化を提言した都の諮問機関『都立病院経営委員会』では、看護師の平均勤続年数が「都立墨東病院は15・2年、民間のA病院は6・1年」とする資料が示され、墨東病院に対し委員から「ずいぶん居心地がいいんでしょうね」と揶揄するような発言も出た。

 大利さんは、「昇給を早々に頭打ちにしてベテランに退職を促すことで、人件費を抑えようというのでしょう」と怒り、さらにこう指摘する。

「ベテランが辞めていくと“いざ”という事態への備えも崩れます。1つの診療科しか経験していない看護師ばかりだと、急な感染症対応はできません」(大利さん)