東京都内で行われている炊き出しや食品配布。そういった生活支援の場で目立って増えているのが女性の姿。コロナ禍が及ぼす影響で収入が減って生活が困窮、なかには住む家を失い公園を泊まり歩く女性もいる。「帰る場所がない」貧困にあえぐ女性たちはどこへ向かうのか―。
公園が生活の場…公衆トイレで水浴
昨年末、NHKの情報番組『クローズアップ現代』で衝撃的な現実が放映された。
そこに映っていたのは「私には帰る場所がない」と嘆く女性。放送当時、彼女は路上生活を送っていた。1日中公園などで過ごし、お風呂に入ることなく、公衆トイレでバケツから水を浴びてすませている。
そんな苦境へと転落したきっかけは新型コロナウイルス。都営住宅に両親と兄弟の5人で暮らしていたが、家計を支えていた父がコロナ禍で失業。家賃を3か月滞納せざるをえなくなったあげく、退居により家を失った。その後、家族はバラバラになり、今はひとりで生きている。
「新型コロナの後、家賃が払えない、住む場所がなくなったという相談は増加傾向にあります」と主に新宿区で生活困窮者の支援を行っている認定NPO法人自立生活サポートセンター「もやい」の担当者は話す。
「もやい」が毎週土曜日に都庁下で行っている、食料品配布会場に実際に足を運んでみると─。確かに女性の姿が目立つ。なかには、冷え込む寒さの中、幼い子どもを2人連れて長時間列に並ぶ女性も。
「コロナ前は配布会場に来る女性は全体の5%ほどでしたが、現在では3倍ほどに増えました」(自立生活サポートセンター「もやい」)。
家を失った女性たちは路上生活に限らず、ネットカフェやファストフード店、友人宅や作業員宿舎などで寝泊する。
男性よりも深刻な女性の貧困
「家なきオンナ」を生み出すもっとも大きな理由は、貧困。しかも同じ貧困とはいっても、女性にとってその状況は男性以上に深刻だ。
そもそも男性と女性では収入に大きな格差がある。国税庁が公表した「令和2年分民間給与実態統計調査」によると、男性の平均年収532万円に対し、女性は293万円。わずかに半分を超える55%でしかない。
このひとつの原因となっているのは、女性の雇用形態の約半分が非正規雇用であること。「令和2年における非正規雇用労働者の割合」を見ると、女性は54・4%で男性の22・2%と比べると3倍に近い。社会的に女性の役割と考えられがちな出産や子育てなどのせいで、正規雇用で働き続けるのが簡単ではないという状況がまだまだ続いている。