目次
Page 1
ー 日本テレビの“顔”として活躍
Page 2
ー 18歳に突きつけられた現実
Page 3
ー 介護生活の中で知ったこと
Page 4
ー 母が子宮がんに、そして父親も
Page 5
ー 男子にモテながらも、一途な彼女
Page 6
ー アナウンサーから報道局へ
Page 7
ー 元祖ヤングケアラーだからできること
Page 8
ー 人の手を借りることの大切さ

 

 母親代わりとして家事をこなし、きょうだいの学費や母親の医療費のために奨学金をもらいながらアルバイトをした大学時代。そんなときによりよい福祉に貢献したいと目指したのがアナウンサーという仕事だった。華やかな放送業界で活躍しつつも両親の介護にプライベートを捧げ、家族介護や福祉社会の問題をライフワークにするようになった彼女の軌跡をたどる。

日本テレビの“顔”として活躍

 町亞聖。この名前と顔に見覚えのある方も多いだろう。そう、彼女は以前日本テレビの局アナとして全国に知られた存在だった。

 新人ながら福留功男アナとの掛け合いが人気だった『いつみても波瀾万丈』はじめ『TVじゃん!!』『ホンの昼メシ前』など、バラエティーからニュース、スポーツ番組まで日本テレビのいくつもの番組の“顔”として活躍した。その後、報道局に異動になり、記者としても活躍。

 2011年に日本テレビを退社、フリーになってからも、TOKYO MX『5時に夢中!』『ニッポン・ダンディ』などのメインMC、また文化放送、ニッポン放送などのラジオ番組でもMCを務めている。

 本業だけではない。若くして母親の介護を経験した彼女は、「家族介護」「認知症とうつ病」「在宅医療」「看取り」「バリアフリー」「児童養護施設」─。これらをテーマにさまざまな活動を行っている。最近になって「ヤングケアラー」というテーマを加えた。

「当時の私は、ただやるしかなかったからやってきただけ。だから特別な意識もなかった。もちろんヤングケアラーなんて言葉もありませんでしたからね」

 と亞聖さんは苦笑する。「ヤング(若い)」、「ケアラー(世話をする人)」は最近、テレビや新聞などのメディアに頻繁に登場する言葉だ。一般的に、「本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どものこと。それにより、子ども自身がやりたいことができないなど、子ども自身の権利が守られていないのが問題点」などといわれる。

 例えば、障害や病気のある大人に代わり、家事をしたり、幼いきょうだいや両親、祖父母の世話をしたりする子どもたち─。ここ近年、その存在が知られるようになったのだ。

 昨年行われた厚生労働省と文部科学省の実態調査によると、中学生のおよそ17人に1人、全日制の高校生の24人に1人が「ヤングケアラー」だとわかったという。

 また、今年4月に政府が発表した実態調査では、全国の公立校に通う小学6年生の6・5%(約15人に1人)が、「世話をしている家族がいる」と回答した。中高生同様に、低年齢層でも一定数は家族ケアに追われている実態が判明したのだ。

 若くして家族の世話をしてきた人々は、人知れず古くから存在していたのだ。町亞聖さんもまた、その1人だった。

 そして、アナウンサーという華やかな表舞台からは想像もつかない、壮絶な「介護生活」を経験してきたのだった。