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ー ファンをざわつかせた松本白鸚からの注文

「こんなパンフレット(筋書)は異例中の異例。團十郎がいかに仲間内に好かれていないか、そんなことを公にされているわけですから、團十郎のメンツも丸つぶれです」

 演劇記者がそう苦笑いで伝えてきた。

ファンをざわつかせた松本白鸚からの注文

 東京・歌舞伎座。現在、「市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露興行が行われている。当初の予定より2年半遅れで誕生した歌舞伎界のスーパースター、市川團十郎(44)。

「7日の初日を迎えても、チケットが売れ残っているという状態でしたが、勧進元の松竹の宣伝が効いて、現在は11月の歌舞伎座はすべて完売になっていますよ」(スポーツ紙演劇記者)

 来年3月には全国15か所で襲名披露巡業公演が20公演行われることも発表された。関係者もさぞ胸をなでおろしていることだろうが、その一方で歌舞伎ファンをざわつかせているのが冒頭で指摘したパンフレットの中身だ。

 團十郎に苦言を呈しているのは、日本芸術院会員でもある名優・松本白鸚(80)。女優の松たか子(45)のパパである。

「通常はエピソードを交えて、祝いのコメントを出すところですが、白鸚はすごい注文を付けているんです。『襲名を機に、より成長してほしいし、変わっていってほしいです。』と。このあたりは素直に読むことができますが、問題はその後。『歌舞伎の世界では先輩から芸を学びますので、習った先輩を大事にしてほしい』『後輩、若手、一門の者達には、おおらかな気持ちで接してほしい』と注文を付けているのです。この真意はというと、團十郎は先輩を敬わない、後輩に厳しい、ということです。叱咤激励をとおり越して、腹に据えかねていることをぶつけた、という感じですね」(先出・演劇記者)

 歌舞伎俳優仲間、とりわけ重鎮たちが團十郎を嫌っているのは、関係各所からちらちら漏れ伝わる。

 初日の口上で、「一時は暴れん坊将軍と呼ばれていました」といじり、観客の笑いを取った尾上菊五郎(80)だが、「当初は、出演を渋っていました。松竹の幹部が、『團菊祭(五月歌舞伎)』もあるんだから何とか、と説得して、出演することになったそうです」(梨園関係者)

 実際、口上には並ぶことにはなったが、芝居の上で團十郎との絡みはない。

 スポーツ紙演劇記者が続ける。

「東京新聞に、早稲田の演劇博物館の副館長・児玉竜一さんのコメントが掲載されていたんですが、これがまた團十郎をえぐるというか。『團十郎という名は、江戸歌舞伎の心柱』と位置づけたうえで、『人を引き付ける天性の華があり、優れた資質を持っているのは間違いない。それを開花させるためにはーー』と続けているんです。つまり、いいものは持っているけどまだ花開いていない、ということ。せめて五分咲きとかなら團十郎も救われますが、この指摘は團十郎の芸の未熟さをずばりと指摘していますね」

 誰もが認める華と素質。その一方で、仲間内に認められていない人間性。すべてを兼ね備えた名優になることをあらかじめ宿命づけられた團十郎に、松本白鸚の苦言は届くのだろうか。

〈取材・文/薮入うらら〉