目次
Page 1
ー 大きな嘘はいいが、小さい嘘は排除
Page 2
ー 感覚の違いがわかるよろこびを共有
Page 3
ー 年始めに必ずやっていることは?

 

『嘘八百』('18年)では千利休の茶碗を、『嘘八百 京町ロワイヤル』('20年)では、古田織部の茶器をめぐり騒動を起こしてきた目利き古美術商の小池則夫と、腕利き陶芸家・野田佐輔。中井貴一(61)が演じる小池と、佐々木蔵之介(54)の野田のくすぶり続ける“骨董コンビ”が、大阪を舞台にシリーズ最大のお宝騒動を巻き起こすのが、'23年1月6日公開の映画『嘘八百 なにわ夢の陣』。

佐々木「悲しいお芝居、うれしいお芝居といろいろありますが、笑わせるお芝居である“喜劇”で、間合いなり感覚を共有することは、とても難しい。だからこそ、手ごたえを感じることができる先輩とご一緒できるのは、本当にありがたいです」

中井「シリーズ3作目になって、明確に“最高のバディだな”と思うようになりました」

大きな嘘はいいが、小さい嘘は排除

中井貴一(61)撮影/廣瀬靖士
中井貴一(61)撮影/廣瀬靖士

 太閤秀吉の7つ目のお宝で、唯一所在不明の光り輝く器“鳳凰”を狙い、一獲千金を夢見るものたちのだましだまされ合いが繰り広げられる。今作では、脚本を作る前のプロット作りから参加した。

中井「ドラマにしても映画にしても、大きな嘘というのはついてもいいと思うんです。僕たちの演じる、表現するという商売自体が、ある種、嘘ですから。ただ、物語の中にある小さい嘘は、なるべく排除してリアリティーを出していかないといけない。役柄の機微や感情の動き、所作など生活に密着している部分というものは、なるべく嘘がないように作っていかないといけないと思うのです。ですから、則夫の行動、傾向を予測し、こういうことはしそうです、しなさそうです、みたいなことを話す機会をいただけて、とてもありがたかったですね」

佐々木「貴一さんと一緒です。1作目、2作目とそれぞれの役柄を生きてきましたので、僕でいえば野田にはこういう動機があってとか、こんな気分になると思いますよ、ということをお話しさせていただきました」

 1作目は16日で、2作目は20日。かなり短い時間で製作してきた作品。今作はついに1か月の撮影期間に。

佐々木「1か月もね(笑)。“も”と言っていますが、それも決して映画として長いわけじゃないんですよ」

中井「“嘘八百”は、ギュッと短期間で撮影したほうが集中できてよいのでは?と思っていました……、いや、思わされてきました(笑)。でも、今回、1か月で撮影をしてみて、こっちが正解だと。1作目のときは、本当にみんな必死で。死ぬか生きるかのハードスケジュールの日々で、みんなほぼ死んでいたというか、記憶がない状態でした(笑)」

佐々木「撮影が終わってホテルに帰ると、気絶するように眠りについて(笑)。共演の先輩方も大変だったと思います」

中井「“嘘八百”シリーズで確実に言えることは、僕らの先輩たちが撮影現場のペースを作ってくれて、それが映像にも反映される。今回でいえば笹野高史さんですし、以前からだと芦屋小雁さん。そして、前2作の坂田(利夫)師匠。先輩たちが作ってくれるペースに僕らが乗っていく映画なんです。だから、なるべく先輩方に出演していただかなければならないんです。現場に存在してくださっているだけで、ありがたいです」