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ー 与沢翼「不動産は買わない。飽きたし」終活モード

 

 2021年、新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、生活の拠点をタイからドバイに移した実業家の与沢翼氏(40)。「ネオヒルズ族」「秒速で1億円稼ぐ男」として注目された同氏は現在、20の物件をドバイに所有する。そんなドバイにいま、ロシアから大勢の富裕層が押し寄せてきているという。同氏にドバイでの暮らしや不動産市場について聞いた。(フリージャーナリスト・泰梨沙子)

与沢翼「不動産は買わない。飽きたし」終活モード

 現在は金融投資不動産投資などで利益を得ており、純資産が約80億円だという与沢氏。世界各地に37の物件を所有しており、そのうち20件がドバイにあるという。そんなドバイの不動産市場の状況について、「ウクライナ侵攻の影響でロシアの富裕層たちがどんどんドバイに押し寄せ、プレミアム物件の需要が拡大している」と話す。

「ロシアの富裕層たちは経済制裁を受け、肩身が狭くなっている。そんなロシアの金持ちがドバイで高級不動産を買ってくれるので、マーケット自体は悪くない。中間価格帯の市場はそこそこだが、ペントハウスとか、高級物件の値段が異様に上がっているという感じ」

 ドバイで不動産を購入するメリットは、なんといっても不動産に対する税制度だ。固定資産税はなく、売却益や家賃収入に課税されることもない。

 さらに、最近のドル高傾向がドバイの不動産の資産価値を高めている。

「アラブ首長国連邦はドルペッグ制を導入しており、通貨ディルハムが米ドルと連動しているので、ドバイ不動産は実質、ドル建て資産ということなんですよ。昨年はドル一強だったので、この流れが続いてくれたら有難いですね。今後どうなるかは分かりませんが、資産全体で見ると円安の為替効果だけで含み益が15億円とかあります」

「ドバイは、大量の富裕層が節税や別荘所有のためにやってくる人工の摩天楼」だと表現する与沢氏。所有するドバイの不動産は1戸当たり1億円以上もざらだ。自身の生活拠点としても総額5.5億円を投じて豪邸を建設しており、「ドバイの暮らしは総じて、レッドカーペットが敷かれているホテルのロビーに高級車で車付けする」ような生活だと表現する。

 一方で、ドバイの暮らしは日本人にとっては適応しにくい点も多いという。

「生活に支障をきたすレベルの暑さです。砂がまっていて、空気がきれいではない。緑もないし雨もあまり降らないから、人工的です。そういうところにずっといると疲れがでてきますね」

 さらに、美味しい日本食を手軽に食べることが難しい。

「例えば、牛カルビ弁当が5000円とかするんですよね。手には入りますけど、美味しくない物がめちゃめちゃ高いという感じですね」

 もともとはタイを拠点としていた与沢氏。今後は数年をドバイで過ごし、住みやすさの観点から、タイに戻る可能性もあるという。複数の国で様々な投資商品に手を出してきたが、今後は投資対象を絞り、現金化を進めていく予定だ。ドバイで所有する不動産も売却を始めているという。

投資信託を通じてアフリカに間接的に投資もしたりして、いろいろ手を出してみたが、一人の人間が見られる範囲、詳しくなれる領域って決まっているなと思って。得意な世界に絞った投資で抜群の結果を目指す方がいいなと感じています。

 物理的な手間も大きいため、もう不動産は買わない。飽きたし。40歳を迎えて、いまは終活モードですね。資産を現金化して、そんなに無理しないで、適当に生きていこうかと思っています」

 かつて成金として傍若無人な姿で世間を騒がせた男は、歳を重ねて肩の力が抜け、ドバイで早すぎる終活に向けて着実に準備を進めていた。

取材・文/泰梨沙子(はた・りさこ)フリージャーナリスト。テレビ局で海外ニュース翻訳、共同通信系NNAにてタイ駐在を経て独立