現在、2月上旬の準々決勝を控え、予選が順調に進む『R-1グランプリ2023』(近年、決勝戦は3月上旬に開催)。ピン芸人日本一を決める大会で、昨年はお見送り芸人しんいちが優勝した。
このR-1、昨年12月に開催された『M-1グランプリ』で優勝したウエストランドの決勝ネタの中で、「M-1グランプリにあってR-1グランプリにないもの」として、「夢」「希望」「大会の価値」「大会の規模」と連発し笑いをとり優勝を勝ち取った。
つまり、これがある種の「あるある」となり共感の笑いを誘ったことになるが、実際に『R-1グランプリ』は、このような『M-1』や『キングオブコント』と比べたディスりが笑いとして成立するような存在なのだろうか。
『R-1グランプリ』に夢と希望がない背景
2002年開催の第1回優勝者は、だいたひかる。その後、ほっしゃん。(05年)、博多華丸(06年)などが優勝するが、中山功太(09年)、あべこうじ(10年)、佐久間一行(11年)、三浦マイルド(13年)、やまもとまさみ(14年)など、少なくとも地上波ゴールデン・プライム帯のバラエティーでよく見る顔ぶれは少ない印象だ。
2016年にハリウッドザコシショウが誇張しすぎたモノマネで優勝を飾り、現在も活躍しているが、19年は霜降り明星の粗品、20年はマヂカルラブリー野田クリスタルと、純然たるピン芸人でなく、コンビとして活躍する芸人が、そして21年は、すでに十分売れているゆりやんレトリィバァが優勝している。
「このあたりの顔ぶれは、苦労の末、ついに勝ち取ったという劇的な印象は薄いかもしれません。粗品や野田がM-1で優勝したことはよく知っていても、R-1チャンピオンでもあることを知らない人も意外といるのではないでしょうか」(スポーツ紙芸能記者)
視聴率もこの数年は6〜7%程度で、優勝賞金も『M-1』の半額の500万円。注目度や規模を見ると、ウエストランドのイジリもあながち誇張されたものとは思えない。
ほっしゃん。やなだぎ武、博多華丸など、『R-1』優勝を機にスターとなった芸人もいて注目度が高い時代もあった。しかしピン芸人の特性と近年の番組作りの相性が変わってきている。
「昨今の人気番組はトークが主体なので、掛け合いをする機会が少ないピン芸人はうまくハマらなかったり空回りすることもあります。共演者や番組MCとのやりとりで面白くしていく今のテレビでは活躍しにくいのが現実です。R-1に出ている人がつまらないのではなく、今のテレビにハマらない姿を見て、“R-1で優勝したからって売れるわけじゃない”という空気が生まれてしまう。そこを客観的に見て“夢がない”“希望がない”となったんだと思います」(放送作家)
コント師を決める『キングオブコント』が10月にあり、さらに年末に向けて『M-1』が動き出すというコントや漫才にはいい“流れ”があるのも、『R-1』の弱さを逆に目立たせているのかもしれない。
「M-1が終わって新しい年が始まり、次はいよいよR-1だ、この大会からスターが誕生するんだという雰囲気が生まれれば、お笑い会にさらにいい流れができると思いますが、現状、なかなかうまくいってないですね。だからウエストランドにネタにされてしまった」(同前)
なんだかんだテレビでよく見る顔=売れているという認識は根強い。『R-1』に夢をもたらすピン芸人の登場に期待したい。
〈取材・文/太田サトル〉