目次
Page 1
ー 不妊治療以外にもできることはある
Page 2
ー ストレスを減らし“卵巣ケア”を ー 不妊治療と“共存”するべき自然妊娠
Page 3
ー 43歳を過ぎたら検討すべきこと

 

 日々、新しい技術が開発され、日進月歩の不妊治療。しかし、「高度生殖医療だけがすべてではない」と、放生先生は警鐘を鳴らす。自身が本来持っている妊娠する力を信じ、高めれば自然妊娠も夢ではない。不妊治療が身近になった今だからこそ、伝えておきたい妊活の“真実”──。

 2022年4月から不妊治療の保険適用が拡大され、人工授精、体外受精(顕微授精を含む)が3割負担で受けられるようになった。

 高額な費用がかかるといわれてきた不妊治療のハードルが下がったといえるだろう。

「今まで経済的な面から不妊治療をためらっていた人たちの負担が減り、不妊治療を受けられる人が増えたことは、素直に喜ばしいと思います。一方で、このことがかえって自然妊娠の機会を奪い、妊娠を遠ざけてしまう可能性を危惧しています」

 こう話すのは、内科医の放生勲先生。内科診療とともに、クリニックに「不妊ルーム」を設け、多くの妊活・不妊に悩むカップルの相談に応じ、これまで2100組以上のカップルを妊娠に導いてきた。なぜ、内科医という立場で不妊の相談に乗ってきたのか。

「私自身が4年あまりの間、夫婦で不妊治療を受けた経験があるからです。もう20年以上も前の話で、今とは不妊治療への抵抗感も技術も大きく違いますが、ひとつだけ変わらないものがあります。

 それが、不妊治療が大きな精神的ストレスを生むということです。不妊治療に1度エントリーしてしまうと、妊娠不妊治療の延長線上にしかないという思い込みが生じ、後戻りできなくなってしまうのです」(放生先生、以下同)

不妊治療以外にもできることはある

 不妊治療にはストレスが伴うことは、経験者なら痛感するところだろう。治療を続ける中で、ストレスとどう向き合うかが、妊娠において極めて重要だと放生先生は言う。

「これほど心身共にストレスという負担になるにもかかわらず、軽視されがちなのは、数値化できないからでしょう。ストレスをコントロールしているのは脳の視床下部です。視床下部は、卵巣や子宮とネットワークでつながっています。視床下部からの命令によってホルモンが分泌され、生理周期はコントロールされています。

 不妊治療の身体への負担、時間的、経済的な負担がストレスとなり“妊娠力”を弱めてしまうのは当然のことなのです。実際、不妊治療をお休みしてストレスから解放された途端、妊娠するケースは、数多くあります」

基礎体温を記録する表
基礎体温を記録する表

 妊娠力とは、心や身体、環境によって左右される、本来持っている妊娠に到達する“力”のこと。とはいえ不妊に悩むカップルのなかには、悠長に妊活をしている場合ではないというケースも多いだろう。

「もちろん不妊治療を否定するつもりはまったくありません。たしかに女性の年齢が上がるにつれて卵子の数は減っていき、その質も低下していきます。年を重ねるほど妊娠しにくくなるのは事実ですし、早く妊娠したいと思う気持ちもわかります。でも私が言いたいのは、“不妊治療以外にもできることはたくさんある”ということです」