7月13日より、「性的姿態等撮影罪」(以下、「撮影罪」)が施行される。「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案」が制定されたことで、従来よりも盗撮や違法な撮影行為の処罰の範囲が広がることとなった。
「本件のニュースの最大のポイントは、“性的な盗撮”それ自体を日本全国で禁止し、重い刑罰を科すところです」と話すのは、法律事務所Zの代表弁護士・伊藤建氏。
「これまで“性的な盗撮”は各都道府県の条例でしか取り締まられていませんでした。しかも、駅や電車内のような公共の場所のみを対象とする条例があるなど、地域によって対象もバラバラでした。また、軽犯罪法でも、いわゆる“のぞき見”は取り締まられていましたが、軽い刑罰しかありませんでした」(伊藤弁護士、以下同)
これまで法改正がなされなかったのは
今回の法律改正のきっかけとなった事例のひとつに、飛行機内での客室乗務員への盗撮行為がある。
「飛行機内での盗撮行為を各都道府県の条例で処罰するということが困難でした。というのも、各都道府県の条例は、その都道府県でしか適用されませんので、飛行機内での盗撮の場合、どこを飛んでいたのかを立証しないと、条例で処罰することができないのです。そういった、各都道府県の条例だけでは足りない状況を鑑み、法律によって日本全国で禁止する必要性がようやく高まってきたということでしょう」
飛行機内の盗撮行為以外にも、改正の背景として考えられることがあるという。
「“性的な盗撮”は各都道府県の条例で禁止されていたように、従来から処罰対象にしようという問題意識はありました。おそらく、カメラ付き携帯電話が普及し始めたことや、技術の進歩により小型カメラが一般人でも入手しやすくなったことが背景にあるでしょう。これまで法改正がなされなかった明確な理由はわかりませんが、“性的な盗撮”の被害は気がつきにくい、ということも関係していたように思います。しかし、スマートフォンや動画配信サービスの普及に加え、動画で稼ぐことができるようになったことで、盗撮された動画が出回るようになりました。こうしたことで、被害に気がつきやすくなったという背景もあるように思います」
「撮影罪」という名称から意味を誤認した人々が増え、《一般道でロケしているユーチューバーに「撮影罪だ!」などと絡むアンチが増えるのでは》などの声がネット上では見られる。
「今回の処罰対象は、あくまでも“性的な”姿を撮影する場合に限られます。そのため、ロケや映り込みは処罰対象ではありません。なぜなら、今回の法律が守っているのは、肖像権などのプライバシーではなく、あくまでも被害者を性的な被害から、です。そのため、単に“撮影罪”と報道してしまえば、許されるはずの撮影行為まで取り締まられるような印象を受け、本来の表現活動が萎縮することが懸念されます。あくまでも性的なものに限定されていることがわかるような名称が必要ではないかと思います」