「こんなに“おいしい”とは思いませんでした(笑)」
放送中の朝ドラ『らんまん』でヒロイン・寿恵子(浜辺美波)を妾にすべく、アプローチを重ねる元薩摩藩の実業家・高藤雅修を演じた伊礼彼方(いれい・かなた 41)。高藤の熱意は時に自分本位で、浜辺自身が“ヤバ藤”と呼んでいたと明かすと、これが燃料投下となってSNSは大盛り上がり。“クズ藤”“エグ藤”“キモ藤”など愛称のバリエーションは急増し、高藤の次なる言動が待ち望まれるように。
『らんまん』の“ヤバ藤”、伊礼彼方とは何者?
伊礼の主戦場はミュージカル。ドラマへのゲスト出演経験はあるが、連ドラへのレギュラー出演は初めてだった。
「お話をいただいたときは、監督から“結構嫌な役だからあまりいい印象にならないかもしれないが、伊礼さんにやってほしい”と。びっくりしましたね。“まさか、自分に!?”と。朝ドラは正直、考えてもいませんでした。
舞台が続く中、“この期間だけは何が何でも休む”と休養のために空けていた時間が、朝ドラの撮影と絶妙に重なって。台本を読むと、その言動は現代の女性から見ると、金に物を言わせるなかなかひどい男で(笑)」
物語を発展させる重要な役。嫌われることは覚悟して撮影に臨んだ。
「めちゃくちゃ楽しかったですよ。芝居をしていく中で、寿恵子さんが嫌がるんですよ(笑)。あの時代、やっぱりスキンシップされたら女性はびっくりしただろうと思うので。あえて自然に、背中や腰に手を回したり、手や脚にキスをしたり。もちろん、台本に書いてあることではあるんですが、なるべく自然に見せることで、おのずと気持ち悪さが増すだろうな、と(笑)」
そして、舞台でも嫌われ役が非常に多いという。
「印象に残っているのは映画『タイタニック』('97年)でのローズ(ケイト・ウィンスレット)の婚約者キャル(ビリー・ゼイン)。慇懃無礼な態度に衝撃を受け“こういう役があるから、ふたりのドラマが引き立つんだよな”と思った記憶があって。芝居を始めたのは遅かったんですが、気づいたら自分の好きな悪役ばかりを演じる方向に進んでいました(笑)」
日常生活ではまず縁がない言動を、ステージ上でやることは快感でしかないと豪快に笑う。