「いま、ライバルの大手住宅メーカーがシェアハウスを建設する計画があります。そこに住むには交野市に住んでいる方に優先権がありますが、もしそこに住まないのであれば、その権利を譲ってもらえませんか」
7月上旬、70代女性のA子さんに、大手住宅メーカーの社員を名乗るBからそんな電話がかかってきた。これが特殊詐欺の入口だった。
大阪府警交野署は20日、A子さんから現金295万円を騙し取ったとして東京都中野区に住む職業不詳の森雄喜容疑者(27)を詐欺の疑いで逮捕した。
解約に1000万円かかるので400万円払え
冒頭のようにお願いされたA子さんは、シェアハウスに関心がなかったため気軽に快諾して電話を切った。すると、今度は別の大手住宅メーカーの社員を名乗るCから電話がかかってきて、
「これは名義貸しにあたり、犯罪です」
と詰められたという。A子さんは慌ててBに電話して「キャンセルしたい」と伝えると、
「解決金として1000万円がかかります。とりあえず、うちが600万円を用意しますので、そちらは400万円を払ってください」
とBが要求。完全に信じ切っているA子さんは400万円支払うとするも手持ちの貯蓄が300万円しかなかった。すると、Bは「295万円でいいから現金を世田谷の事務所に宅配便で送れ」と指示。
宅配業者からその金を受け取ったのが、森容疑者だった。その後、怪しいと思ったA子さんが警察に相談して、事件が発覚。送り先の世田谷の事務所は、容疑者らのアジトではなく、空き家だったため最初は容疑者を特定できなかったが、
「現金の入った荷物を渡した宅配業者の“右目下にタトゥーがあった”という証言から防犯カメラやSNSなどの捜査で森容疑者を特定、逮捕にこぎつけた。B、Cは特殊詐欺グループのかけ子で、森容疑者は受け子だと思われる」(捜査関係者)
警察の取り調べに対して森容疑者は、
「先輩に頼まれて、(宅配便の)段ボール箱を受け取ったのは事実だが、それを開けていないので、現金が入っていたかどうかはわからない」
と容疑を一部否認しているという。