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ー 父母の思い出と一緒に兄妹家族と愉しく暮らす
俳優・エッセイストの檀ふみさん

 俳優として活躍しながら、エッセイストとしても人気を博す檀ふみさん(69)。美食家でワインにも造詣が深く、着物や茶道にも精通。年を重ねた現在も清楚さと知性にあふれている。

父母の思い出と一緒に兄妹家族と愉しく暮らす

 プライベートでは'15年に母が92歳で他界。父・檀一雄さんは檀さんが21歳のころに亡くなっており、未婚で子どももいない檀さんは“おひとりさま”に。だが、実の兄妹と一緒に暮らし、その生活を愉(たの)しんでいるようだ。

 もともと生家のあった場所に兄夫婦たちと2世帯住宅として家を建て直したのち、檀さんは妹と居住。兄夫婦との家の間も鍵をつけていないそう。兄夫婦のところは子どもも独立し、夫婦ふたりだけ。兄嫁も鍵は面倒だからいらないと言ってくれたとか。

 檀さんも「将来はヘルパーさんに来てもらって、ここをグループホームみたいにするのもいい」と、雑誌で語っていた。

 檀さんは、住まいを快適にしようと整理する中で気づいたことがあるという。

 現在の家は建て替える際、区画整理の関係で敷地が半分になった。家には父が残した約1万冊の蔵書や美術品などが大量にあり、それらの遺品整理を余儀なくされた。知り合いに譲ったり、蔵書を査定に出したりと片っ端から整理する。

 しかし、整理するうちに、物に染みついた思い出が蘇り、当初想定していたような荷物の整理はできなかったという。雑誌への寄稿で、

《人に対する記憶は頭のなかだけでなく、その人が愛用していた物にも宿っているということ。それを見て記憶が喚起され、父や母の思い出が蘇り、私のなかで生きていく》

 と語る。今は“断捨離”ブームだが、「過ぎ去った日々の思い出が染みついた品を物色するのも悪くない気がする」と、物と向き合うことの楽しみに気づいたようだ。 

 父母との思い出に囲まれながら、気兼ねない関係の兄妹と暮らす檀さん。OVER60世代、そんな生活もいいのかもしれない。

取材・文/諸橋久美子