目次
Page 1
ー 女優・歌手の松島トモ子の一人暮らし
Page 2
ー 壮絶だった自宅介護と一人暮らしの理由
Page 3
ー 上品な母が罵詈雑言を吐き夜中になると飛び出す
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ー 母娘二人で満州から決死の逃避行 ー 帰り着いた日本で映画界にスカウト
Page 5
ー たった一人で表紙のカバーガール
Page 6
ー 娘の腕の中で冷たくなって ー 芸能生活今年で75周年を迎える
Page 7
ー 母・志奈枝の色褪せない存在感

 

 都内某所の、高級賃貸マンションの一室─。

「えっ、あれまあ!“バナナの皮”さん、あなたはどうしてここにいらっしゃるの!?」

女優・歌手の松島トモ子の一人暮らし

女優、歌手、タレント・松島トモ子(78)撮影/廣瀬靖士
女優、歌手、タレント・松島トモ子(78)撮影/廣瀬靖士

 キッチンのゴミ箱の中のバナナの皮に、そう声をかけたのは、女優にして歌手、タレントの松島トモ子(78)だ。

 さかのぼること3年前の2021年10月、レビー小体型認知症を患っていた母・志奈枝さんを5年間の自宅介護ののち失った。最愛の母を見送って昨年から、齢77歳にして初めての一人暮らし。

 わずか4歳で芸能界デビュー。以来、大勢の大人たちに囲まれて生きてきた。

 家に帰れば、家事全般はすべてお手伝いさんがやってくれる。何より“一卵性母子”と呼ばれた志奈枝さんが影のように付き添い、仕事から生活までを献身的にサポートしてくれていた。家事は今でも週5回、お手伝いさんが担ってくれている。不自由なことは、まったくない。 

 だが、バナナを食べてゴミ箱に皮を捨てれば、お手伝いさんが収集に出してくれるまで、皮はずっとそのままだ。ゴミ箱の中なんぞ、覗いたこともなかったこの人には、それがたまらなくおかしい。

「“あなた(バナナの皮)は私が捨てに行かないとダメなんですか?”そう声に出して会話してしまうの(笑)」

 浅草寺の豆まきに共にゲストとして招かれ、以来一緒に食事に行く仲の“お兄ちゃん”こと陸上競技指導者の瀬古利彦さんがこの人を評してこう言う。

「上品で独特の雰囲気がある人なんだけど、ふわふわとして何をしゃべり出すかわからない。目がものすごく大きいからかなあ、ちょっと宇宙人みたいなところがある人ですよ(笑)」

 その“宇宙人”が、大きな目を輝かせながらこんなふうに言う。

「一人暮らしって、やってみるとおもしろい。だって初めてやることばかりだから」

 もう数十年の付き合いで、松島のコンサートの演出を務める室町あかねさんが、

「家事は一切しなかったから、包丁をどこで買うか、どう使うかも知らなかった人。引っ越して大変だろうとカップ麺を持参したときには、“お湯は沸かせる?”と尋ねたほど。“沸かせるわよ!”との返事が来ましたけどね(笑)。

 お高くとまったところなんてまったくない人ですけれど、今どきでいうタレントじゃなくてスター。大河内傳次郎とか、俳優・女優が雲の上の存在だった時代の“昭和の大スター”として生きてきた人なんです」

 昭和の大スターには最近の風呂だって新鮮だ。

「お風呂がしゃべるということも初めて知ったの。

 女性の声で“もうすぐお風呂が沸きます”“お風呂が沸きました”って言うでしょ?  だから“わかってる! もう、うるさ~い”って。そうやってお風呂としゃべっているんです(笑)。そうした小さなことを楽しんじゃうのが、一人暮らしのコツかしらね」