目次
Page 1
ー みんながほっとけない! 戦略的成功のゾワゾワ感
Page 2
ー 料理女、私を見て女、やりすぎ女
Page 3
ー 寄生する女、姉妹のパートナーに手を出す女、シリアルキラー

 

 7月から始まった月9ドラマ『海のはじまり』(月曜夜9時~フジテレビ系)が《もはやホラー》《オソロシすぎる》と話題。

 月岡夏(目黒蓮)は大学時代の恋人・南雲水季(古川琴音)の葬儀で、自分には6歳の娘・海(泉谷星奈)がいたことを知る。当時、中絶同意書にサインを求められた夏は“別の方法はないの?”と問いかけるも、水季は聞く耳を持たず。一方的な別れを夏に告げ、密かに産み、娘には父親“夏くん”の話をふんだんに聞かせながら育て、母子で夏の自宅前まで訪れている。歴代ドラマの中でも水季は“ヤバイ女”の上位に入りそうだが……。ドラマに精通するライターの吉田潮さんに尋ねてみると、

「私はさほどホラーだとは思わないですね。もちろん夏の側、現彼女・弥生(有村架純)の側からしたらホラーですが。そんな弥生もあっという間に“私、お母さんになれるかな”という感じに。もちろん、弥生は過去に中絶をしているので、罪滅ぼしの気持ちも大きいと思いますが」

みんながほっとけない! 戦略的成功のゾワゾワ感

 ホラー具合は、誰に自分を置き換えるかだという。

もし好きだった男性の子どもを密かに産んでいたら、中絶同意書を持ち歩くのはホラーなのかな?多分、私もそうするかも。水季には悪意や恨み、復讐心はまったくないですよね。そして娘に“父親は死んだ”といったウソをつくのは嫌だったんでしょう。“パパはいる”と隠さないだけでなく、“パパはふたりいてもいい”ぐらいの話をしていて。私は逆にフラットでいいなと思いました」(吉田さん、以下同)

 そして水季が妊娠を明かしたとき、夏は早々に就職活動を始めていた。

「“この人はやっぱり世間体を気にして生きているんだな”と水季は感じたと思うんです。夏の人生の歩みの邪魔はしたくないけど、自分は産みたい。“じゃあ、ひとりで”となったんだろうなと思います」

 いただきもののイメージが強い『鳩サブレ―』を自ら買って食べるシーンも、水季の他人や世間体に左右されないキャラクターが表れていると吉田さん。

 初回の視聴率は8.0%、2話は8.1%(世帯平均)。7月15日に放送された第3話は7.1%を記録した。数字は大きく落としていない。TVerのお気に入り登録者数ランキングは、7月期ドラマの中でダントツ1位の約124万人(7月14日現在)となっている。

「ここ最近の月9ドラマって当たってないですよね?続きが気にならなかったというか。そんな中で『海のはじまり』は最初からみんなをゾワゾワさせて、それこそホラーという感覚を持たせたことは戦略的に成功だったと思います。子どもの親権や養育費が関わってくるから、みんなほっとけない。言いたいことがある人がいっぱいいると思うんですよ。やっぱり、財閥御曹司との恋愛や記憶喪失には物申したくなりませんよね(笑)。

『海のはじまり』はすごく重い荷物のようなものを背負わせて、賛否両論を承知のうえで、恋愛ものをちゃんと書こうという脚本家・生方美久さんのプライドのようなものを感じます。“えっ!?”“ちょっと気持ち悪い”“コワイ”“でも、私もこれだったらやるかな”など反感と共感が相混じる感じ。すごくいい手法だと思うんですよね。そして現時点で、この作品でいちばん“ヤバイ女”は水季の母親(大竹しのぶ)かなって私は思いますけどね(笑)」