猛暑が落ち着いてくるとアウトドアレジャーを楽しむ人も増えるが「遠足や、ちょっとしたハイキング気分で出かけて遭難してしまったり、最悪、命を落とすケースもある」と、山岳遭難防止アドバイザーは注意を呼びかける。実際に起こったアウトドアでの死亡事例を紹介。安心、安全を改めて確認して!
高尾山のような低い山でも事故は多い
“自然”は私たちの心を癒してくれるが、時に危険な牙を剥く。
「山や川、海であれ、野外のレジャーには、さまざまな危険が潜んでいます。そのことを認識していないと、ケガではすまず、命を落とすことにもなりかねません」
そう話すのは、山岳遭難などに詳しいフリーライターの羽根田治さんだ。実際、行楽シーズンに新聞やテレビを見ていると、山での遭難事故や海・川での水難事故、中にはクマのような野生動物との遭遇など、痛ましいニュースを目にする。
日本人にとって身近な富士山では今年、インバウンドの影響などで準備不足や体力不足の登山者が増えて夏山遭難が多発。7月の山開き初日から8月1日までで、すでに7人も亡くなっている。
「富士山は標高差が大きく、行動時間が長くなる分、身体に大きな負担がかかります。実は日本でいちばん厳しい山なんですよ。ただ、山での事故は標高の高い山だけで起きるわけではありません。案外、東京都の高尾山のような低い山でも事故は多いです」(羽根田さん、以下同)
旅先で紅葉を楽しめるハイキングコースを見つけ、軽い気持ちで「せっかくだから歩いてみようか」と、何の装備も持たずに山に入って道に迷ったり、滑落や転倒をしたり、危険な動物に出くわすトラブルも少なくない。
警察庁が発表した2023年度の都道府県別山岳遭難発生状況を見ると、1位の長野県に続いて多いのが、低山の多い東京都、加えて4位は神奈川県である。
「週末に奥多摩や丹沢に出かける人は多いのですが、標高が低いわりに山が深いので道に迷って行方不明になる人も。中には何年も見つからないという例もあるんです」
水辺でも注意が必要だ。水難事故と聞くと、夏に海や川で泳いでいるときに起こるとイメージするかもしれない。しかし、遊泳中よりも釣りの最中が最も多い。
「高波にさらわれたり、防波堤や消波ブロックから足を踏み外す、船釣りの場合には船から落ちて亡くなる事故も結構起きています。夜釣りをしていて、いつのまにか姿が見えなくなるといったことも」
自然から命を守るために大事なのは、“事前に情報を集めて計画を立てる”ことにつきる。どういった服装や装備で行くべきなのか、持ち物は何があるといいのか、どれくらいの時間がかかるのか。
例えば、釣りに行くならライフジャケットを必ず着用するなど。万が一、何かが起きてしまったときを想定して、準備をしていれば大事に至らないはずだ。
「遭難でよくあるのは、『登山に行く』とだけ言って出かけたあと帰ってこないから、家族が警察に相談したものの、どこの山にいるのか誰も知らないケースです。捜したくてもどこを捜していいのかわからず、初動が遅れて手遅れになってしまう」