0930_吉田照美
 ラジオの達人である吉田照美さん。その魅力について改めてお話しを伺った。

「ラジオって、テレビに比べて、出演者に対しての距離の持ち方が近いんですよね。僕が街を歩いていると、ラジオを聴いている人が近づいてきて、“こないだ照美さんが言ってたことはちょっと違うと思うんだけど”みたいに、単刀直入に話の中身をぶつけてきます(笑い)。テレビを見ている人は“テレビに出ている人だ”という距離感で、あんまり近づいてくるということはないですよね。その差は非常にあると思いますね」

 文化放送に入社後、すぐに『桂竜也の夕焼けワイド』という番組でロケの仕事を経験したという吉田さん。当時、しゃべるのが苦手だったため、街中でいきなり大きな声を出すことへの抵抗感があり、吹っ切れるまで大変だったそうだ。

「昼の放送の『やる気MANMAN!』は20年続きましたけど、若者向けの『てるてるワイド』の後で、若い人と一緒にバカなことをしたかったのに、社会人が放送でバカなことを言ったりやったりしていることを受け入れてくれるはずもないし、たぶん共感してもらえないだろうなってあきらめもあったんで、もって1年かなと。でも僕もフリーになったから食っていかないといけないし、強力な裏番組があったりで、ホントやる気全然なかったんですよ(笑い)。でも昼のラジオってみんな同じような感じで、どれを聴いても違いが感じられないっていうのがあるから、僕は開き直りで夜と同じようなバカバカしいことやっちゃおうっていう、“昼の深夜放送”をやったんです。それがよかったんでしょうね」

 60歳を過ぎた今もラジオの仕事を続ける吉田さん。さまざまなメディアが発達した昨今だが、ラジオの重要性をこう語る。

「人間がそこにいて、等身大でしゃべったりするっていうのはいちばん大事なことだと思うし、それがこの時代になって周りを見てみると、意外とできてないってことが多くなってきているというのを考えると、ラジオには活路があるんじゃないかと思うんです。ラジオはそういう特性をちゃんと見極めてやっていけば、未来永劫続くメディアだと思いますよ」