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 先月29日から来年の年賀状が販売開始に。最近は手書きの機会も減り、プリンターで大量に作成することも多くなった。

「『鬼平犯科帳シリーズ』などで人気を博した時代小説家の池波正太郎さんは、1月1日から翌年の年賀状を書き始めたそうです。あて名から裏面まですべて手書き。晩年には6000枚にもなったといいます」(現代礼法研究所代表・マナー講師の岩下先生)

 1月1日が気持ちのよい節目となるよう、誰もが喜ぶワンランク上の年賀状の書き方を岩下先生に伝授してもらった。まずは基本から。

「年賀状は余白も大切です。上下左右10ミリは間を空けるようにしてください。大きく分けると3つに分けられ、①賀詞、②あいさつ、③日付の3つの要素から構成されます。それぞれポイントを押さえて書けば、読みやすく、気持ちが伝わりやすい年賀状が書けますよ」(岩下先生)

 基本的に、赤ペンを避け、黒やブルーのインクの万年筆や筆、筆ペンで書くこと。

 賀詞に使われる言葉は定型文的に決まっているもの。“あけましておめでとう“”謹賀新年“”迎春“など、さまざまな言葉があるけれど、誰にどのように使えばいいの?

「わかりやすい見分け方は、“謹賀新年”“恭賀新年”“敬頌新禧”などの4文字の賀詞は目上の人へ使うものです。“迎春”“賀正”“初春”などの2文字の賀詞は同輩から目下の人へ使い、“新年おめでとうございます”“あけましておめでとうございます”“新春のお慶びを申し上げます”などは相手を選ばずに使うことができます」

 2文字の賀詞は“春を迎えました”“正月を祝います”など、相手を敬う言葉ではなく、新春を伝えるだけの言葉。4文字の賀詞は、目上の人に対する敬意や、ていねいな気持ちも入っているため、目上の人に使うとよい。また、よく耳にする“新年あけましておめでとうございます”はNG。

「“あける”という言葉には、“梅雨があける”というように、ある事象が終わってしまうという意味もあるため、新年が終わってしまうととらえることもできます。そのため、使わないほうがよいでしょう」(岩下先生)

 賀詞では句読点を使わないのもマナー。新年のあいさつに”区切り”をつけてはいけないからだ。

「次のあいさつ文は賀詞よりも小さく、少し段を下げて書くこと。目上の方に使えるワードとしては、“ご指導いただき~”というお礼の文や、“本年も夫婦ともども~”というような言葉ですね。 子どもや孫に書く年賀状であれば、自分自身の目標と“○○ちゃんの今年の目標はなんですか?”というような疑問文にするとよいでしょう」(岩下先生)

 最後を締めくくる日付の書き方も気が抜けない。

「よく年号のあとに“一月一日 元旦”と書く人がいますが、元旦という言葉自体が1月1日の朝という意味なので、意味が重複してしまいます。“平成二十八年一月一日”や“平成二十八年 元旦”と書けばOKです。賀詞やあいさつより小さく、2文字分ほど下げて書くとよいでしょう」(岩下先生)

 また、お正月に届いたものにお返事を書く場合はどうすれば良いのだろうか。

「1月15日の小正月までは年賀状を出しても大丈夫です。日付に元旦という言葉は使わず、“平成二十八年 お正月”と書けばOK。ていねいな言い回しで、日付を問わず使えます」(岩下先生)

 裏面が書けたら、最後に“様”の書き方もひと工夫。

「関係性によって敬称を使い分けることができれば、なおグッドです」(岩下先生)

 ただし、マナーだけを気にしてはダメ、と岩下先生。

「マナーは“~せねばならぬ”ではなく、相手の気持ちを考えること。ふだんは仲のよいお姑さんに形式ばった年賀状を送ってもいい気はされませんよね。お孫さんにはひらがなを織り交ぜたり、親しい間柄の人には少しくだけた表現をするなど、相手が喜んでくれるような年賀状を想像して、書いてみてくださいね」(岩下先生)