少し前までは、男性特有の悩みというイメージがあった「薄毛」。それが最近では、女性用のスカルプケア商品が続々と登場。富士経済の資料によれば、商品市場は2004年の60億円から2014年には177億にまで拡大。そのニーズは確実に高まっています。
「女性の社会進出などにより、ストレス社会で生きる負担が頭皮や髪に現れているという背景があります。その一方で、髪の悩みを持つ女性は昔からいたものの、人知れず悩んでいた方が多かったのだと思います。今は社会的にオープンになったことで、悩みを解決しようとする女性が増えたのではないでしょうか」
と語るのは、女性専門頭髪外来があるAACクリニック銀座の浜中先生。
■多様で複雑に絡み合う女性の薄毛の原因とは
男性に多い「男性型脱毛症」は、男性ホルモンとの関係が深く、その原因や治療法が明確になっているのに対し、女性の薄毛・抜け毛の原因は、ひとつに特定するのが難しいのだとか。
「加齢変化による血流の低下や女性ホルモンの分泌量の減少という2大要因がありますが、女性のバックグラウンドとして、仕事、家庭、育児、親の介護など複数の役割を担い、妊娠、出産、更年期といったライフイベントなど、心と身体に影響をおよぼす要素が多いことも髪や頭皮の負担につながると考えられます。
それ以外にも生活習慣の乱れ、ほかの病気や薬の副作用、頭皮のトラブルが加わることもあり、何がどれだけ関わっているかのパターンは悩む人の数だけあるといっても過言ではありません」(浜中先生、以下同)
複雑な要因ゆえに、髪の悩みを抱える人の年齢層は10~90代まで幅広い。
「ただ、クリニックのニーズがいちばん増えるのは更年期前後の40~50代ですね」
■思い当たる人は要注意! 髪によくないNG習慣
健康の要となる十分な睡眠と栄養のバランスは、髪にとっても重要なもの。
「食事量を極端に減らす過度なダイエットや栄養が偏った食事は禁物。また髪は夜寝ている間に作られるので、夜型生活を送っている人は細胞が活性化するタイミングを逃し、損をしています。
過度な飲酒や喫煙、ストレスは血管を収縮させ、毛根の血行を悪くしてしまいます。爪を立ててゴシゴシ洗うシャンプーや、洗髪後しっかり髪を乾かさずに自然乾燥している方も頭皮や髪のダメージを招くため見直しが必要。
また女性ホルモンとも密接な関係があるため、生理不順や無月経を放置せずきちんと対処することも大切です」
■バランスのとれた食事で美髪の土台作りを
髪のために実践したい生活習慣の中でも、とくに重要なのが食事のバランス。
「忙しいとつい、おにぎりやパンだけという炭水化物メーンの食事になってしまいがちですが、髪はケラチンというタンパク質でできているので、肉や魚、卵、大豆などに多く含まれるタンパク質の摂取は必須です。
さらにプラスαとしてビタミンB群や亜鉛、ビタミンH(ビオチン)、鉄、ビタミンCなど、髪や皮膚、粘膜に関わる栄養をバランスよくとることで髪が生える土台である頭皮の状態を改善。そのうえで、いい髪質を保っていくことが重要になります。
バランスがとれた食事のわかりやすい合言葉として、“まごわやさしい”を覚えておくといいでしょう。髪に必要な食材のまめ、ごま、わかめ(海藻)、野菜、魚、しいたけ(キノコ類)、いもの頭文字をとっています。これらの食材を意識すれば、タンパク質、ビタミン、ミネラル、炭水化物をまんべんなくとることができますよ」
イラスト/上田惣子