【好評連載・フィフィ姐さんの言いたい放題】事務所からの独立、グループの解散騒動をめぐり、18日、番組内にて謝罪を行ったSMAP。今回のケースのように、日本ではタレントが騒動を起こした場合、公の場で謝罪をするという光景が頻繁に見受けられる。こうした日本ならではともいえる光景は、フィフィの目にどのように映っているのだろうか。

タレントの謝罪には違和感を覚える

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 事務所や業界というものがいかに威圧的かを露呈する形となってしまった、今回の謝罪。

 たとえプライベートなことであっても、日本ではタレントが何か騒動を起こした場合、みんなの前で謝罪しますよね。坊主にしたりまでして。

 こうした光景は、実に日本っぽいなあと常日頃から違和感を覚えていたのですが、今回、放送倫理委員会であるBPOのウェブサイトに多数のクレームが寄せられてサーバーがダウンしたということで、日本人も違和感を持っているのだなということがわかりました。

 そもそも日本のタレントというのは、一見華やかそうには見えますが、事務所、テレビ局、広告代理店などの支配のもとで働かせてもらっている状態です。トラブルを起こしてしまうと、敬遠され干されてしまう、非常に弱い立場にあります。そのため、事務所から不当な扱いを受けても、泣き寝入りする場合が多いんです。

アメリカにおけるユニオンの存在

 しかし、たとえばアメリカの場合、タレントを守る協会、ユニオンという存在があります。

 タレントはもちろん、フリーランスの技術の方などもユニオンに所属することで、不当な扱いを受けたり、労働環境が悪かったりしたときにはユニオンを通して訴えることができるんです。そして訴えを起こしてもユニオンが守ってくれるので、日本のように事務所、テレビ局、広告代理店などから干される心配もありません。

 日本にも一応、そのような存在が一部にはあるようですが、ほとんど機能していないようです。

アメとムチによってタレントを管理する事務所

 歯向かえばペナルティを与えられてしまう、そんな半ば恐怖政治にも近いような事務所なら辞めてしまえばいいのにと思われるかもしれません。だけど、そこはアメとムチがうまく機能しているんですよね。

 つまり、事務所にさえ歯向かわなければ、タレントは保護されるし、収入を得てある程度の欲を満たすことができる。だけど独立を画策したりすると、干されるしテレビに出られなくなってしまうわけ。"外に出たらやっていけない"という圧力がかかる。

 アメとムチが機能している、こうした状況下に置かれたタレントの多くは、多少不満があっても、あるいは独立してやっていけるだけの才能があったとしても、独立するよりは今の状態のほうがまだ良いのかなと、事務所に管理される道を選ぶわけです。まして、幼少期から事務所に所属し、そうした業界のルールを叩き込まれながら育ってきたのならば、余計にその思いは強いはずです。

今回のケースは、日本社会の縮図

 そして何もこれは芸能界のみに限った話ではなく、日本社会全体についてもいえることです。夜遅くまで、休みを返上してまで働かなくてはならない状況でも、最低限の賃金や保障が与えられているものだから、不満を言いながらも結局、今の会社を辞めて独立する、あるいは転職するという行動になかなか移さない。

 たとえば国がどんどん消費税を上げても、ある程度の幸せが与えられているものだから、文句を言ったり反対運動を起こしたりはしない。"他の国はもっと大変だよ"と教育されている。

 だけど、外から日本という国を眺めれば、今のままのほうがマシだという考えにはならないはずで、日本人ほど働いているなら、もっと賃金をもらってもいいはずだし、休んだりしてもおかしくない。そんな条件でよく働いているね、ということになる。

 本当はもっと改善の余地も可能性もあるのに、与えられた幸せのなかで満足してしまっている。今回のケースは、そんな日本の縮図を見ているように思えました。

《構成・文/岸沙織》