十分な食べ物がなく餓死したとみられる齋藤理玖くん(死亡推定当時5歳)の白骨遺体が見つかってから約1年4か月。
殺人罪などに問われた父親で元トラック運転手・齋藤幸裕被告(37)の裁判が驚きの展開をみせている。逮捕当時に同棲していた女性が出廷し、被告の証言内容を否定する話を始めたのだ。
A子さんは被告が逮捕されるまで、妻子持ちの男性とは知らなかった。しかも、このころのデートは、A子さんは自転車で、被告はスクーターで“ラブホ集合、ラブホ解散”というものだったという。
被告はA子さんに対して申し訳ない気持ちがあったのだろうか。'06年12月ごろに、ふたりで東京ディズニーランドに遊びに行っている。被告はディズニーデートの日のことをこう証言していた。
「理玖のことが頭にあったので、心からは楽しめませんでした。食事は……朝早くあげて、夜、帰ってきてからあげました」
神奈川・厚木市とディズニーランドのある千葉・浦安市は約70キロ離れている。移動時間を加味すると、理玖くんは最低16時間以上、放置されている。
A子さんは、デート前後の時間帯も被告と一緒に過ごしたと証言したから、丸1日近く、もしくはそれ以上、放置された疑いも出てきた。
また、被告宅アパートは当時、料金未納で電気やガス、水道を止められていたとみられている。デートするお金があるのに、なぜ払わなかったのか。A子さんがデート費用についておおまかな計算をして「向こう(被告)持ち」と話したことで、被告は逃げ道をふさがれた。
A子さんは、被告を独身と信じて裏切られた。交際当時は結婚を考えていたという。
「これからどうするの? と被告に言いましたが、“お金がないから、まだムリ”と言われました……」
交際9年、同棲生活は7年以上に及んだ。家出した妻とは正式に離婚しておらず、結婚できるはずがなかった。事件の感想を尋ねられたA子さんはこう言った。
「……悲しいです。子どもさんが亡くなったこともそうですが、彼(被告)がずっと私にウソをついていたことも、悲しいです」
さらに被告宅アパートが長期間、不衛生だったこともわかった。ゴミ屋敷同然の部屋にアダルト雑誌が散乱し、理玖くんの白骨遺体はゴミに囲まれていた。妻が家出する前から散らかっていたという。
妻のママ友は、「家は汚かった。ゴミの中に、使用したコンドームが交じっていたこともありました。私は自分の子どもを部屋にあげたらいけないと思って、1度も連れて行ったことがないんです」と証言した。
検察側は8日の公判で、被告に懲役20年を求刑。殺意があったと指摘した。理玖くんは、電気を止められた真っ暗な部屋で父親の帰りを待つしかなかった。どんなにひもじかったろう。
なぜ、被告はこんな大人になったのか。どんな家庭に育ったのか。被告は法廷で母親の話をした。被告が小学5、6年生のころ、母親が統合失調症を発病したという。
「昔は(母親に)叱られてばかりでしたが、病気になってから無口になりました。中学1年ぐらいになると、部屋の中にローソクをいっぱい焚いて、“悪魔が来る、悪魔が来る”とウロウロするんです」
母親は法廷に姿を見せていない。被告の父親と妹が証言台に立った─。
(取材・文/フリーライター山嵜信明と週刊女性取材班)