運動不足や加齢で身体に不調を感じたとき、「年のせい」と諦め、薬に頼ってしまいがち。
しかし、「薬を使っても根本の問題は解決しません。理想は薬に頼らない健康な状態を、日々の習慣でつくっていくこと」
たった1分習慣で健康寿命が延ばせる
そう語るのは、内科医の秋津壽男先生。また、女性疾患に詳しい赤澤純代先生は、
「健康のカギを握る毛細血管は、加齢による血流不足などで年々細くなったり、血管自体が減ったりしますが、毎日ほんの1分の体操で、しかもお金をかけずに血管の老化を防ぐことができます」
名医も実践する1分メソッドで、薬に頼らない身体に!
座ったままの体操でなめらか股関節に
「老後も健康に歩くためには、今から“深層筋”を鍛えることが重要です」と 整形外科医の杉山肇先生は言う。
「深層筋は、足腰を動かす要である股関節の安定やスムーズな動きをサポートしている筋肉。多くの人が普段あまり動かしていない筋肉ですが、使わないままでいると、その働きを周りの大きな筋肉に頼ってしまい、腰などに負担がかかってしまいます」
体操で深層筋の伸び縮みを促し、スムーズな股関節の動きを維持しよう。
ワザ1:「パカパカ体操」10回×2セット
深層筋を動かして一生歩ける足に!
【やり方】
(1)ラクな姿勢で椅子に腰かけ、つま先は正面に。足を肩幅に開き、ひざを閉じる。
(2)力を入れず、ラクなスピードでひざを開き、また閉じる。リズムよく繰り返す。
《ポイント》股関節や腰に痛みが出る場合は無理をして行わないこと
全身の毛細血管が健康と美のカギ
あらゆる臓器に張り巡らされている毛細血管は健康の要だが、血流不足により徐々に減ってしまう。
毛細血管の働きに詳しい赤澤純代先生は、「毛細血管の衰えは万病のもとです」として、消失を防ぐ方法を教えてくれた。
「大切なのは末端の血流を促すこと。血流が悪くなりがちな足先や、こり固まりがちな肩甲骨などを意識して動かし、全身の血流をアップしましょう。肌の老化、手足の冷えの予防にもなりますよ」
ワザ2:「くねくね肩回し」10秒
血流アップで毛細血管を増やす
【やり方】
(1)両腕を前に伸ばし、腕を交差して手のひら同士を合わせて、指を組む。
(2)腕を交差した状態で、上半身をくねくねするように、両肩を回す。多少肘が曲がってもOK。
《ポイント》手の指先に血流を行き渡らせるため、腕の付け根を意識して動かして
ワザ3:「足指じゃんけん」30秒×2回
【やり方】
(1)「グー」足の5本の指すべてをぐっと内側に曲げる。
(2)「チョキ」足の親指と人さし指を開き、前後になるべく離す。
(3)「パー」足の指をすべて離して広げる。
歯周病の超悪玉菌が脳を萎縮させる
「歯周病」と聞くと口内だけの問題と思いがちだが、口腔衛生学の専門家である花田信弘先生は、「歯周病が認知症を引き起こす要因になることが近年の研究でわかってきました」と教えてくれた。
「歯周病の代表的な原因菌の1つであるポルフィロモナス・ジンジバリス菌が血管内で毒性物質を作り出すと、血流に乗って脳へ到達。結果、アルツハイマー型認知症になりやすくなると考えられているのです」
歯周病菌は舌についた舌苔にもいるので、歯と一緒に舌も清潔に保つことが重要。菌が多い寝起きは歯磨きだけではなく、舌磨きもお忘れなく。
ワザ4:「舌みがき」
朝イチの舌みがきが認知症を遠ざける
【やり方】
(1)手指を清潔にし、濡らしたガーゼを指に巻く。舌ブラシがあればそれでもOK。
(2)ガーゼで、舌の表面を奥から舌先に向かってやさしく数回なでる。目安は舌が薄ピンク色になるまで行う。
薬に頼らず、身体の自己治癒力を高めて
高血圧、糖尿病、肥満……日本人の多くが罹患する生活習慣病。内科医の秋津壽男先生は「生活習慣病は薬では治せません」と話す。
「医師から『血圧が高い』と言われた人は、薬を飲めば確かに数値は下がります。しかし、これは薬で症状を抑えているだけで、根本的に健康になったわけではありません。そればかりか、薬によって、もっと怖い病気のサインを見逃すことにもなりかねない」
“習慣”を正すことこそ、生活習慣病を治す最善の道だ。誰でもできる簡単アクションを毎日実践しよう。
ワザ5:「毎日体重計に乗る」
生活習慣病予防には、自分の身体の状態を知ることが大切。毎日体重計に乗ることは、生活習慣病の元凶である肥満の予防に。できれば毎日、経過を比較するために、同じ時間に計測を。
ワザ6:「1時間に1回は大きく伸びをする」
「座りっぱなしが健康に与える害は喫煙に匹敵する」ともいわれている。
座り作業のときは1時間に1回は立ち上がり、腕を引っ張り合うように伸ばしたり、肩甲骨を寄せたりするストレッチを。肥満防止にもつながる。
ワザ7:「寝る前によかったことを思い出す」
寝る前に1分間、ポジティブなことを考えると、ストレスなく入眠できるため睡眠が深くなり、睡眠中の身体と脳の回復がうまく進む。寝る前の1分習慣が睡眠の質を上げ、免疫力をアップしてくれるのだ。
近くと遠くを交互に見る動きに効果アリ
加齢により目のピント調節を行う水晶体の弾力性が失われ、近くのものが見えにくくなる“老眼”。年だから仕方ないと諦めがちだが、
「実は手持ちの老眼鏡で、老眼の進行を遅らせたり、改善したりできるのです」
そう話すのは、“目の博士”として知られる梶田雅義先生。まず老眼鏡をかけて遠くがぼやける状態をつくり、水晶体を支える毛様体筋をリラックス。次に手元と遠くを交互に見ることで水晶体をもみほぐして、老眼が改善できるのだ。
ワザ8:「水晶体もみほぐしで老眼トレ」20秒×10回
いつもの老眼鏡で視界スッキリ!
【やり方】
(1)手持ちの老眼鏡をかけて手を顔に近づけ、手元を見る。ぼやけない範囲でできるだけ手元にピントを合わせる。
(2)次に、ぼやけない範囲で見える、できるだけ遠くのものを見る。1メートル以上離れた場所にあるものなどがよい。
※近視の人は裸眼で行うか、コンタクトレンズの上から老眼鏡をかけて行う
《ポイント》目は日中に酷使するため、就寝前に行い、1日の疲れを解消するとよい
まばたきの数が減り目の表面の脂が不足
スマホやパソコンの見すぎでドライアイになっている人は少なくない。目薬をさしても潤わない人は「水分不足ではなく、目の“脂”不足かもしれません」と、眼科医の有田玲子先生は指摘する。
「目の乾燥は、脂でできた膜が防いでいます。この脂は“マイボーム腺”という、まぶたにある組織から分泌されるのですが、まばたきの数が減ったり、マイボーム腺が詰まっていたりすると、脂が出にくくなるのです。
ドライアイ解消のためには、まぶたの筋トレとマイボーム腺の詰まりを取り除くのがいいですね」
まぶたを動かす筋肉を鍛える体操は、パソコン作業やテレビを見る時間の合間に。マイボーム腺を洗う方法は、洗顔後の習慣にしよう。
ワザ9:「ぱちぱちギューまぶた体操」15秒×3回
目の乾燥を防ぐ“脂の膜”を正常に!
【やり方】
(1)2秒間目を閉じたあと、軽く2回まばたきをする。
(2)上まぶたに力を入れ、2秒間ギューッと目を閉じる。
(3)パッと目を開け、下まぶたを上げるように「まぶしい目」をする。
(4)上まぶたを引き上げ、「きつねの目」をしながら、下まぶたを引き上げる。
ワザ10:「マイボーム洗顔」
【やり方】
マイボーム腺はまつげの生え際の内側にある。お湯で湿らせたコットンパッドを使い、まつげの生え際の内側を、5回ほどやさしくなでるように洗う。
《ポイント》手は清潔に洗ってから行う。人さし指を湿らせて、同様に行ってもOK
テレビを見ながら超簡単エクササイズ
膣ケアに詳しい美容外科医の櫻井夏子先生は「コロナ禍以降、尿もれ症状を実感する人が増えました」と警鐘を鳴らす。
「コロナ禍で運動不足に陥り、骨盤の内側にある“骨盤底筋群”という筋肉が衰えた人が多いのですが、この筋力が低下すると、尿もれが起きやすくなるのです」
まずはヨガで緩めてからトレーニングで締めることが大切! “ながら”でもできる方法で、骨盤底筋群を効果的に鍛えよう。
ワザ11:「あぐらでおきあがりこぼし」左右×10回
【やり方】
(1)足裏を合わせてあぐらをかき、両手で足を持つ。クッションを敷いても◯。
(2)左右のお尻に交互に体重をかけるように、テンポよく身体を左右に揺らす。
ワザ12:「片足ぐるぐる体操」10回×左右
【やり方】
横向きに寝て足を開き、上側の足を肩の高さまで上げ、ぐるぐると内回りに回転させる。10回行ったら反対の足も行う。
《ポイント》膣まわりを意識しながら行おう。だんだん足が下がってこないよう注意!
いつもの動作を逆手で行うだけ!
人が身体を動かすとき、脳の運動を司る部分が活性化。特に筋肉の種類が多い手指は、細かい動きをすることで脳を効率的に刺激できる。
「利き手と逆の手を意識的に動かすと、右脳も左脳も偏りなく刺激できて、認知症を予防する効果が期待できます」
と、脳内科医の加藤俊徳先生はすすめる。
「歯磨きやコップを持つ手を利き手と逆にするほか、短い日記を利き手と逆の手で書くのもいいでしょう」
ワザ13:「左手で1行日記」
利き手と逆の手が脳を活性化
【やり方】
利き手と逆の手で日記を書くだけ。短くてもいいので、日付とひと言コメントを。
「出来事や景色を思い出す」「利き手と逆の手で書く」という2アクションで脳を活性化させる。
《ポイント》午前中に行うのがベター。早い時間に脳を活性化させると、脳の覚醒時間が長くなり、認知症予防に