「運動不足が続くと筋力が低下して、肥満や高血圧、糖尿病などの生活習慣病や認知症を招いたり、足腰が弱って転倒しやすくなり、将来の介護リスクを高める可能性も。そこでおすすめなのが3秒筋トレ。たった3秒行うだけで筋力がアップし、健康寿命を延ばすことができます」
そう話すのは、理学療法士としての経験をもとに『3秒筋トレ』を考案した中村雅俊先生だ。3秒筋トレとは一体どんなものなのか。
全身若返る「3秒筋トレ」
「日常の動作に欠かせない筋力は、20~30代以降年々低下していきます。さらに筋肉自体も加齢や運動不足で減少します。筋肉は新陳代謝が活発で常に分解と合成を繰り返していますが、運動による刺激が少ないと合成が分解に追いつかず筋肉が徐々に減ってしまうのです」
こうした筋肉の減少で身体が弱っていくことをサルコペニアというが、デスクワークが多い30代の女性でもサルコペニアを発症しているケースが少なくないという。
「ウォーキングしているから大丈夫、と思っている人にも、サルコペニアに該当するケースが実は隠れている可能性があります。ウォーキングは体脂肪燃焼や血流アップに効果的ですが、筋肉に刺激を与えるには不十分。筋トレのような強い負荷が必要です。
3秒筋トレは、3秒かけてゆっくりブレーキをかけながら椅子に座ることで筋肉に強い刺激が加わり、1日10回を週1日行うだけでも筋力がアップします」
実際に3秒筋トレを10週続けて生活動作が改善された高齢者が多くいるという。
「シルバーカーに頼らないと不安で歩けなかった80代の女性に3秒筋トレを1日10回、週に2日続けてもらったところ、何にもつかまらず歩けるようになり、シルバーカーを後ろ手で引けるまでになりました。
また落ちそうで怖いからと階段を四つんばいで後ろ向きに下りていた70代の女性も、同じように続けたことで、手すりを使いながら前向きに階段を下りられるように」
筋力向上によって日常の基本動作がスムーズになり、気持ちも前向きになるという。中村先生の書籍『たった3秒筋トレ』(講談社)には目的別にさまざまな3秒筋トレが紹介されているが、今回は週刊女性PRIME読者におすすめの3つを紹介してもらった。
「基本の動作は、3秒かけてゆっくり椅子に座る『椅子座り』と、立ったまま3秒かけてゆっくりかかとを下ろす『かかと下ろし』。共に足腰の大きな筋肉を効率的に鍛えられます。
もう一つは二の腕のたるみに効果的な『片ひじ曲げ』。3秒かけてゆっくりひじを曲げるだけで日頃使わない上腕三頭筋が鍛えられ、引き締めにつながります」
3秒筋トレは1日10回、週1日を10週続けることで筋力アップにつながるが、おすすめは1日10回を週2日行うことで筋肉量も増え、サルコペニアの防止や代謝アップで太りにくい身体を手に入れることができる。
「疲れにくくなったり、メンタルがポジティブになって生活がアクティブになる効果もあります。何より続けることが大切。忙しい人や運動が苦手な人も、運動への入り口としてぜひチャレンジしてみてください」
【椅子座り】1セット×10回
鍛えられる部位:太ももの前側・太ももの後ろ側・お尻
(1)両腕を胸の前で組んだ状態で、足を腰幅に開いてまっすぐ立つ。
(2)「1」と声に出してカウントしながら、膝が90度になるまでお尻を下ろす。
(3)「2、3、4、5」と声に出してカウントしながら、お尻をゆっくり座面すれすれまで近づける。
【かかと下ろし】1セット×10回
鍛えられる部位:ふくらはぎ
(1)かかとをできるだけ高く引き上げ、つま先立ちになる。
(2)「1」と声に出してカウントしながら、かかとを真ん中あたりまで下ろす。
(3)「2、3、4、5」と声に出してカウントしながら、かかとをゆっくり床すれすれまで近づける。
【片ひじ曲げ】1セット×10回
鍛えられる部位:上腕の後ろ側
(1)右手で左手首の内側をつかんで、胸の高さまで上げる。
(2)「1」と声に出してカウントしながら、左腕を90度曲げる。右手は左腕に抵抗するように力を入れる。
(3)「2、3、4、5」と声に出してカウントしながら、右手で左腕をさらに押す。左腕はその力に押し負けないようにしながら、深くまで曲げきる。
教えてくれたのは……中村雅俊先生●西九州大学リハビリテーション学部准教授/理学療法士。3秒筋トレについての国際論文を2022年に発表。ニューヨーク・タイムズで取り上げられ話題に。NHKの『ガッテン!』、テレビ朝日系の『グッド!モーニング』など数々のメディアで取り上げられる。
取材・文/井上真規子