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最近の医学研究では、便秘は多くの病気の始まりであることが明らかになっています。快便は健康長寿にもつながります

 と話すのは、京都府立医科大学教授で腸内微生物学が専門の内藤裕二先生。

快便にもいい長寿のまちの食生活

「100歳以上の百寿者の割合が全国平均の約3倍というのが京都府北部の町、京丹後市です。男性の長寿世界一の木村次郎右衛門さん(2013年逝去。没年齢116歳)が過ごしたまちとして、世界的に注目されています。そのまちの食生活は快便にも非常によいのです」

 京丹後市の高齢者は80%の人が週3回以上いも類を食べており、66%の人が海藻類を食べているそう。

全粒穀物を主食にしている人が多く、菜、豆類を日常的におかずとして食べています。このような食生活は腸内フローラに酪酸を作る酪酸菌を増やします。

 酪酸は、肥満を予防したり、免疫機能を整える効果のある短鎖脂肪酸のひとつで、酪酸が多いと“すっきり快便”が実現します

 京丹後市のような食事は酪酸菌などの有用菌(腸内の善玉菌)のエサとなる食物繊維が多いということ。

 ちなみに、日本消化管学会が中心になって刊行した診察ガイドラインでは、便秘症は硬便などの便形状、週に3回未満の排便頻度、いきみ、残便感などの排便周辺症状などから診断することになっている。毎日出ていなくても、残便感がなく、すっきりスルリと出れば、週に3日でもいいという。

腸内で発酵する発酵性食物繊維

食物繊維は水溶性と不溶性の2つに分類されています。水溶性はその名のとおり、水に溶けやすい食物繊維。溶けると粘度が増すので便がやわらかくなり、スルリと出しやすくなります

 反対に水に溶けにくいのが不溶性食物繊維。

「不溶性食物繊維は腸内で水分を吸着して数倍に膨れるので、便のカサが増え腸のぜん動運動が促されます。ちなみに、不溶性と水溶性は、2:1の割合でとるのが理想的といわれています」

 しかし近年、これらとは異なる観点から分類された食物繊維が注目を集めている。それが〈発酵性食物繊維〉。

「発酵性食物繊維とは、腸内で発酵する食物繊維のことをいいます。細菌による分解作用で人間に役立つものを発酵といいますが、発酵性食物繊維は分解されビフィズス菌など善玉菌のエサとなることで、これらの菌を増やします。要は、腸内環境を整えるのに大いに役立つのです」

発酵性の高い水溶性食物繊維とそれが含まれる食材

 さらにすごいのは、腸内細菌によって発酵される過程で健康に有用な成分が作り出されること。

「短鎖脂肪酸というもので、腸だけでなく身体中で働いて、健康にいい影響を及ぼしていることが近年わかってきました」

 どんな効果が期待できるのだろうか?

短鎖脂肪酸が豊富にあると腸内が弱酸性に保たれるので、有害な菌が増えにくくなります。善玉菌の発育を促進し、ぜん動運動を促すので、便秘や下痢などの不調が改善。さらに過敏性腸症候群や潰瘍性大腸炎といった、治療が難しい腸の病気の改善にも役立つことがわかっています

 腸粘膜に隙間ができ、毒素や細菌、未消化の食物が血中に漏れ出す〈腸漏れ〉も近年、アレルギー疾患や倦怠感などを招く一因として知られるようになった。この改善にも短鎖脂肪酸は有効。なぜなら腸粘膜を構成する細胞のエネルギー源となり、その結合を強化してくれるからだ。

短鎖脂肪酸は血流にのって全身に運ばれるので、身体全体にもよい影響を与えます。例えば、血糖値を一定に保つホルモンであるインスリンの分泌を調整したり、血管の柔軟性を高めて動脈硬化や高血圧を予防改善したり、炎症を抑える物質を作ったり。

 免疫力を調整する〈制御性T細胞〉も短鎖脂肪酸によって活性化。免疫反応が過剰になって起こるアトピー性皮膚炎やぜんそくの改善にも役立ちます

 そう聞くと、がぜん気になるのは発酵性食物繊維が含まれる食品。

「腸内細菌のエサになりやすく発酵性が高いのは水溶性食物繊維で、ペクチン、アルギン酸など主に7つの種類があります。右表はそれらが多く含まれる食物です」

短鎖脂肪酸の産生を促す注目の食物繊維

 世界保健機関(WHO)は、成人1人あたりの食物繊維量として25gを推奨している。

「私も理想は1日あたり24g以上と考えていますが、現在の平均摂取量からすると、あと10g以上足りません。しかし、これを食品で補おうとすると、さつまいもなら2本弱、バナナなら9本、キャベツなら2分の1個程度を食べなければならず、日々この量をとり続けるのは難しいのではないかと思います。

 そこでおすすめしたいのが、植物由来の水溶性食物繊維である〈グアー豆食物繊維〉です」 

 グアー豆とはインゲン豆と形の似たマメ科の植物で、インドやパキスタンなどの乾燥した地域に自生している。

グアー豆からとれる食物繊維の発酵性は、水溶性食物繊維の中でもトップクラス。短鎖脂肪酸の産生を促進しやすいのが大きな特長です。

 また発酵が急激に起こると、腸内にガスがたまり、おなかが痛くなったり下痢をしたりすることがありますが、グアー豆食物繊維は発酵がゆっくり進むのも優れた点。ですから腸が過敏な人にもおすすめです

サイクルミーの限定新商品「グアー豆食物繊維がとれるゼリープラスライチ」。セブン-イレブン限定販売「食物繊維がとれる香るジャスミンティー」なども話題

 日本消化管学会から2023年に出された〈診療ガイドライン〉でも、慢性便秘症の人の排便回数を有意に増加させる食物繊維として、グアー豆食物繊維が紹介されている。

「その他にも腸管のバリア機能を高めるなど、数多くの作用が研究によって確かめられています。インフルエンザの発症や筋萎縮を抑える作用も確認されているので、免疫力の低下や筋肉量の減少が気になる高齢者の方にもぜひとっていただきたいですね」

 グアー豆食物繊維は、主に通販サイトで購入が可能。粉末状で飲み物や料理に混ぜてとるものや錠剤タイプなどがある。また、セブン―イレブンでもグアー豆食物繊維入りのお茶やお菓子が販売されているので、そちらを試すのもあり。

「私自身、顆粒で水に溶けやすいグアー豆食物繊維をスムージーに入れて、ほぼ毎朝飲んでいます。その効果もあってか、忙しい毎日を快腸・快便で過ごせています」

内藤裕二先生●京都府立医科大学大学院医学研究科教授。消化器病学や消化器内視鏡学、生活習慣病の他、健康長寿や抗加齢医学、腸内フローラや酪酸菌研究も専門。酪酸菌と健康長寿の関係などの研究をはじめ、長年腸内細菌を研究し続けている本領域の第一人者。

教えてくれたのは……内藤裕二先生●京都府立医科大学大学院医学研究科 教授。消化器病学や消化器内視鏡学、生活習慣病の他、健康長寿や抗加齢医学、腸内フローラや酪酸菌研究も専門。酪酸菌と健康長寿の関係などの研究をはじめ、長年腸内細菌を研究し続けている本領域の第一人者。著書に『100年腸~最強食物繊維があらゆる不調を改善!』(内外出版社)。

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取材・文/中西美紀