お金を貯めるにはどうしたら良いの? 経済アナリストの森永卓郎氏、ファイナンシャルプランナーの山口京子さん、社会保険労務士の北村庄吾氏の“お金3賢人”に基本知識を教えてもらったーー。
まず、お金に対する考え方や習慣を更新できたら、とにかく行動するのみ?
「いえいえ。お金持ちになるには、順番があるんです」
と、山口さん。
「まず借金があるなら、その返済が先です。ご存じのとおり、ローンには高い利子がつきます。銀行のカードローンなら年利14%、消費者金融のキャッシングなら年利18%。100万円借りたら、年に10万円以上、利子をつけて返さなければいけないんです。借金は早く返して、これらの利子を浮かせるべし!」
負債がなくなったら、次のステップ。
「お金を増やしたいなら、3つのお財布を順番に満たしていきましょう。その3つとは、(1)使う (2)備える (3)増やす です」
「毎月必ず出ていく固定費(住宅ローンや家賃など)や生活費(水道光熱費など)、そして冠婚葬祭や家電購入といった臨時出費のためのお金です。だいたい生活費の3か月分くらいを、普通預金口座にキープしておくといいですね」
「これは、住宅や車の購入、子どもの進学など、5年以内に使う予定のあるお金のことです。また、人生は山あり谷あり。病気やケガ、出産や介護など、何が起こるかわかりません。“もしも”の時に、あなたを確実に助けてくれるのはお金。人生のリスクに備えるのも、このお財布です」
「これはズバリ、投資です。昔は投資というと100万円くらいのお金が必要でしたが、1万円程度からでも分散投資が始められるようになりました。生活していくために必要なお金は(1)と(2)のお財布にちゃんとあります。それ以上のお金は、“遊ばせず、働いてもらう”ことが大切です」
でも、損をしそうで心配です……。
「長いスパンで上がったり下がったりするのが投資です。もちろん値下がりすることもあります。だから、すぐに儲けようとは思わないこと。長く続けることで、じっくりとお金を育てるイメージを持ってください。このお財布をパンパンにできたら、お金持ちと言えると思いますよ」
さて、ここからは各マネーキワードの上手な利用方法を見ていきます。
普通預金
とにかく安全なイメージが強い銀行の普通預金&定期預金。“使う財布”や“備える財布”の預け先として、真っ先に思い浮かぶはず。少しでも金利が高い銀行に預けたいのは、誰もが同じ。
普通預金で気になるのがイオン銀行。キャッシュカード、クレジットカード、電子マネー(WAON)が一体化した『イオンカードセレクト』を作ると、普通預金金利が年0・1%アップして、0・12%に。
定期預金では、住信SBIネット銀行が『円定期預金特別金利キャンペーン』を展開中(3月5日まで。新規開設口座限定)。金利は0・5%(3か月)。1000円以上と、手軽な金額で始められる。
「丹念に探せば、信用金庫や地方銀行も、このような定期預金のキャンペーンをやっています。それを狙うのも悪くはありませんが、支店の数が少ないなど、利便性はよくないと思います」(森永さん)
「とはいえ、利息の差は数十円、数百円程度でしょう。もし、口座を開設するために、隣の駅まで電車で行ったとしたら、もう赤字です(笑)」(北村さん)
今回登場のお金3賢人は、
「金利にこだわるよりも、ATMの引き出し手数料、振込手数料などのコストを下げる工夫をしたほうが断然お得!」
と、口をそろえる。特にネット銀行は各種手数料が無料、もしくは割安でオススメだという。
「あちこち目移りするよりもメガバンク、最寄りの信用金庫、ネット銀行。その3行をうまく使い分けるほうが、きちんとお金を管理できますよ」(北村さん)
個人向け国債
『国債』とは、国が発行する債券(借金)。半年に1度利子をくれて、満期には元本が戻ってくる。何といっても国が保証しているから、安心感が大! 基本的には毎月発行、銀行や証券会社などで1万円から購入できる。金融機関によっては口座管理手数料がかかる場合もあるので、要確認。
個人向け国債は、『変動10』『固定5』『固定3』の3種類(数字は満期までの年数)。固定タイプは金利が一定だが、変動タイプは半年ごとに金利が見直される。
気になる金利は、本来は商品によって異なるが、今は史上まれな低金利のため、どれも一律0・05%。メガバンクの定期預金に比べれば金利は高く、購入して1年たてばいつでも解約できる。ただし途中解約した場合は、直前2回の利子が差し引かれる。
「変動金利型なら、これから経済が好転すれば金利も上がる可能性が。検討している人は『変動10』がいいかもしれませんね」(山口さん)
今、個人向け国債が人気な理由は、証券会社が独自で行っているキャッシュバックキャンペーン。大和証券、みずほ証券、野村證券などは100万円ごとに3000円がもらえる(『固定3』は対象外の場合もあるので注意)。
「4月から、財務省が金融機関に支払っている“個人向け国債手数料”が減額になります。キャッシュバックは、この手数料を購入者に還元しているものなので、4月以降は、キャッシュバックの金額が下がることが予想されます」(北村さん)
個人年金
前述の“増やす財布”の候補にできるのが、こちら。
「僕が、40代後半以上の人にオススメしているのが『個人年金保険』(以下、個人年金)。ズバリ、節税で得できるんです」
とは、前出の北村さん。個人年金とは、生命保険会社が販売している保険商品。保険料を毎月積み立て、老後に受け取るという仕組み。
「元本保証なので、基本的には貯金と考えてもらってかまいません。しかも利率は普通預金よりもいい。何より、個人年金に加入すると、支払う保険料に応じて所得税と住民税が安くなります。1年間で8万円以上かけると、税金を計算する際の基準となる金額(所得)から4万円がマイナス(所得控除)されますからね」
税金が安くなるなら、うれしい限り。
「結論からいえば、1年につき合計4800円の税金が浮きます。これってすごくないですか? 8万円貯金して、4800円の利息がつくなんてこと、このご時世にほかにあります?」
ちなみにこの節税額は、所得税が5%(※)の人の場合。所得税が20%(※※)の人なら、1万800円も税金が浮くことに!
ちなみに節税効果を得られるのは、収入があり税金を納めている人だけ。専業主婦の場合は、夫に加入してもらおう。
「加入する場合は、くれぐれも“個人年金保険料控除の対象となる商品”を選ぶようにしてください」
個人年金の中には、“変額個人年金”や“外貨建て個人年金”など、元本割れのリスキー商品も。こういったものには気をつけて!
※課税所得195万円以下。年収目安は約400万円以下 ※※課税所得330万円超え〜695万円以下。年収目安は約580万円〜約980万円程度【注】扶養の妻1人の会社員のケース。社会保険料などは考慮していません
個人型確定拠出年金
「とにかくメリットだらけで、やらないなんてもったいない!」
お金3賢人がこぞって推すのが、『個人型確定拠出年金』、通称iDeCo(イデコ)。
老後、公的年金にプラスアルファが欲しい人のための私的年金で、“増えるお財布”にイチオシ。
「前ページで紹介した個人年金とイデコは別ものです」(北村さん、以下同)
その違いは、個人年金の運用が保険会社任せであるのに対し、イデコは自分で運用方針を決めること。
「銀行預金や投資信託などの中から自分で運用商品を選び、その成績で将来もらえる年金額が決まります。いわば“自分次第の年金”です」
イデコには、税金面でのうれしいメリットがたくさんある。
■所得税・住民税が安くなる
所得税・住民税を計算する際に、イデコへの1年分の掛け金がすべて所得から差し引かれる。
「例えば、年収が500万円の人だと所得税と住民税が合計20%かかります。この人がイデコに月額2万3000円、年間27万6000円を支払った場合は、その20%の5万5200円が節税できるんです」
年収が低い人でも掛け金の15%は節税効果が得られるのだ。
■利益はなんと非課税
通常、預金の金利や投資で得た利益は、約20%の税金が差し引かれる。でも、イデコで運用して得た利益は、なんと非課税!
「公的年金が目減りしていく中、国はこうした節税メリットを用意することで、自分自身で老後資金を用意してもらおうと考えているんです」
そんな背景もあり、今年1月からは、専業主婦や公務員など、60歳未満のすべての人が利用可能に。
「専業主婦は、税金を納めていないので、所得控除のメリットは得られませんが、利益の非課税メリットはしっかりと受けられます」
■損したくない人は元本確保型で
イデコの申し込みは、銀行や証券会社などの運営管理機関を通じて行う。
「運営管理機関によって、手数料が異なります。一般的には、年間5000円くらい。ネット証券はもっと割安です」
最大の悩みどころが、自分で決めるという運用方針。どの運営管理機関も、投資信託を中心に15〜20個くらいの金融商品が。いったい何を選べばいい? あと、損はしたくないんです……。
「大丈夫。イデコにも“元本確保型”の商品があります。老後が近い人やお金のことがまったくわからない人は、元本確保型の定期預金や積立保険を選べばOKです。節税メリットだけ狙いましょう」
取材・文/鷺島鈴香、『週刊女性』取材班
<お金3賢人のプロフィール>
森永卓郎(もりなが・たくろう)◎経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。専門はマクロ経済、雇用対策。『情報ライブ ミヤネ屋』(日本テレビ系)、『がっちりマンデー!!』(TBS系)レギュラー。バラエティー番組でも活躍中
山口京子(やまぐち・きょうこ)◎ファイナンシャルプランナー。家計簿から保険、お金を増やす運用まで、女性にやさしいアドバイスに定評が。最新刊に『お金に泣かされないための100の法則』(主婦と生活社)。メディア出演多数
北村庄吾(きたむら・しょうご) ◎社会保険労務士、行政書士、ファイナンシャルプランナー。年金や医療保険など、社会保険制度問題の評論家としても活躍。近著に『人生を左右するお金のカベ』(日本経済新聞出版社)