除染マネーを食いものにするゼネコン
放射能汚染と除染の“いたちごっこ”のような闘いが続く中、住民は放射性物質だけでなく、行政の監視まで求められている。東京新聞が今年5月に報じた「除染費用の水増し請求」をきっかけに明るみに出た、福島の現実だ。
除染事業を請け負うJV(共同企業体)の下請け企業の一部が「森林」を「竹林」と装い偽の報告書を提出、単価を10倍に水増しし、約2500万円を不正に受け取っていた。昨年11月時点で、福島市はこの事態を内部告発により把握していたが、数か月にわたり放置した。
これに対し住民有志は5月15日、市の監査委員に住民監査を請求、JVの不正受給分を返還させるよう求めた。市は今月6日にようやく返還請求に至り、現在、刑事告訴の準備も進めている。
監査請求を行った熊坂修一さん(65)は「私たちの税金をドブに捨ててほしくない。ほかにも隠されていることがないか、行政で厳しくチェックしてほしい」と話す。また、住民有志の代理人・馬奈木厳太郎弁護士は「市が把握してから9か月経過しているが、監査請求した意義はあった。しかし除染を適切にやるのは法律上の義務。返還請求・刑事告訴で幕引きをはかり、他の地域には問題ないと結論づけるのは早計だ」と指摘した。
今年に入り、除染事業をめぐるゼネコンの不正も相次いで明るみに出ている。『大成建設』の共同企業体は5月、除染を行っていない南相馬市の農地を「除染ずみ」として虚偽の報告を行い、加えて6月には、『安藤ハザマ』が従業員の宿泊人数や単価を改ざんした領収書をいわき市と田村市に提出したことで、東京地検特捜部が家宅捜索を行っている。
「各地で除染をめぐる問題が噴出しているが、これにより住民の被ばく回避、地域の原状回復措置の中核である除染への信頼だけでなく、行政への信頼をも失墜させている。自主避難者への住宅支援の打ち切りや避難指示解除のスケジュールは、除染完了ありきで進められた。実態に沿わない国の方針は見直されるべきです」(馬奈木弁護士)
“被災地に寄り添う”とはどういうことか、国はもちろん、私たち自身があらためて考えなければならない。
取材・文/吉田千亜◎フリーライター、編集者。東日本大震災後、福島第一原発事故による放射能汚染と向き合う母親たちや、原発避難者への取材を精力的に続けている。近著に『ルポ 母子避難』(岩波書店)