知事アンケートに手ごたえあり
引き取る運動には常に2つの疑問が寄せられる。
まず、「米兵犯罪に責任を取るのか」との疑問だ。特に女性への性的被害は議論を避けて通れない。
佐々木さんはこう答える。
「犯罪はもう沖縄で起きています。では、尋ねたい。それに対し、今まで何もしなかったのは誰? 日米安保という米軍基地駐留を認めているのは誰? と。これは市民団体だけではなく、全住民で考える問題です」
もうひとつの疑問は、「どこに引き取るか」だ。
「引き取る会福岡」や「引き取る・東京」は「それは私たちではなく、政治が決めること。私たちの目的は、それを政治課題にもっていくこと」と考えている。
つまり、引き取り運動は、いかに地方や国の議員を動かすかも問われている。実際、その手探りともいえる活動も行われた。
6月16日、引き取り5団体が『辺野古を止める! 全国基地引き取り緊急連絡会』を結成、東京で記者会見を開催した。会見にあたり、連絡会が進めていたのが、沖縄の米軍基地への認識を問うため、全国知事に送ったアンケートの集計だった。里村さんが原案を練り、『沖縄に応答する会@新潟』の福本圭介さんが分析、資料にまとめた。
46都道府県知事の42知事が回答したが、福本さんは「脈はある」と思った。選択式の回答で「沖縄の米軍基地を縮小すべきだ」と回答したのは4知事にとどまったものの、記述式回答では、3分の1の知事が基地負担削減の必要性に、4分の1が日米地位協定の改定の必要性に言及したからだ。
「このような知事が一定数いることは、引き取る運動の可能性を覚える」(福本さん)
とはいえ、引き取りは一朝一夕ではできない。だが佐々木さんらは、「迷いはないです。10年単位で活動を続けます」との覚悟を見せている。沖縄に犠牲を強いる政府与党の姿勢に黙っていられないからだ。
前出・坂口さんは言う。
「政府は普天間飛行場の移設は“辺野古が唯一の方法”と言います。でも、“本土”で引き受けるとの声が大きくなれば、そうは言えなくなるはずです」
取材・文/樫田秀樹
ジャーナリスト。'89年より執筆活動を開始。国内外の社会問題についての取材を精力的に続けている。『悪夢の超特急 リニア中央新幹線』(旬報社)が第58回日本ジャーナリスト会議賞を受賞