薄味ソース焼きそばにパスタソースをON、その大胆さ!
■イタリアン(新潟県全域)
蒸した中華麺をソースで味つけし、具のもやし、キャベツとともに炒める。トマトソースなどパスタ風のソースをかけるのが基本だが、カレーソースも王道の1つ。
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トマトやクリームなどのパスタソースをかけた焼きそば『イタリアン』は、新潟県民の日常食。部活帰りの学生が、日曜日の買い物に来た家族が、ちょっと小腹を満たすための一品。立ち位置的にはたこ焼きやたい焼きに近いが、もちろん全国区ではなく、あくまで新潟限定の食文化だ。
イタリアンを提供するのは『みかづき』『フレンド』という2大チェーン。前者は新潟市を、後者は長岡市を中心に展開し、’60年代からじわじわと県民食としての地位を確立していった。勢力圏が違うこともあり、両チェーンの仲はいい。いがみ合うこともなく、ほのぼのと商売しているところもイタリアンという料理にふさわしい。
そう、イタリアンの根底に流れるのは「ゆるやかな安心感」だ。駅やスーパーのイートインコーナーに、当たり前のようにたたずむ店舗。そこでは誰ひとりとして気取らず、ただ日常の食事を楽しんでいる。これは褒め言葉だが、両チェーンで提供されるイタリアンの最大の魅力はお手ごろ価格と安定の味わい。
決して驚くほどおいしいわけではないが、初めて食べる県外民はみな、「ああ、こういうことね!」と納得する。
日常食とは、驚くほどうまくても、まずくてもダメ。友人や家族と当たり前のようにイタリアンを食べる日々は尊い。それこそが真のソウルフードではないか。