自由研究で全学力の基礎が身につく

 親は自由研究にどう関わればいいのか? 子育てに関する多くの書籍を持つ、教育評論家の親野智可等さんはこう指摘する。

「子どもだけでテーマを決めて実行するのは難しいので、親のサポートが必要です。オススメは、子どもが普段から好んで取り組んでいることをとことんやらせてあげて、それをまとめる方法です」

 サッカーが大好きなら、練習の記録をつけたり、工作が好きなら作った過程と工夫した点を記入する。

好きなことに夢中になると、いろいろな能力が伸びます。例えばタレントのさかなクンは、海の生きものが大好きで幼いころから観察した結果、集中力や記憶力、図鑑や文献を読むための読解力や語彙力が自然と身についたのだと思います。絵を描いたり、海の魅力を人に説明するすぐれた能力もある。興味に従ってひとつのことを突き詰めたからこそ、多くの才能を身につけ活躍できるのです」

 加えて、「好奇心をもとにした自由研究は子どもの脳の発達に重要」と指摘するのは、発達脳科学者の成田奈緒子さん。

「興味を追求することは、思考力や集中力、創造性などをつかさどる前頭葉を刺激します。前頭葉は9~11歳くらいで完成するので、低学年では親がある程度、自由研究の筋道を立ててあげて、高学年になったら自分で考えていけるようになるのが理想ですね」

 研究テーマはなんでもOKだとか。

「例えば、私の娘は犬が大好きなのですが、ある日、“犬を触っていると気分が落ち着く気がする”と言ったので、“調べてみたら?”と言って自由研究のテーマに選びました」

 まとめ方は、(1)仮説を立てる、(2)情報収集する、(3)実験・検証、(4)考察するという流れ。「犬を触ったら落ち着くか?」という例の場合、「本物の犬を触ったら気分が落ち着くはず」という仮説を立て、気分が落ち着くとき、人間の身体ではどんなことが起こっているのかを図書館やネットで調べさせる。そこで、リラックス状態になると血圧が下がることがわかったら、実際に家庭用の血圧計で、本物の犬を触ったときと、ぬいぐるみの犬を触ったときの血圧の下がり具合を測定し、結論を導き出すという方法。

 実験で仮説どおりの結果が得られなくてもあわてる必要はない。本物の犬を触っても血圧が下がらなかったなら、「もしかしたら、よその家のペットの犬だったからかもしれない」などと予測できれば、それも立派な研究成果!

「なぜ思ったような結果が得られなかったのかを考えることで脳が活性化します。親が先回りして失敗を回避するのではなく、どんどん間違えさせてください」