マグロの釣り上げに立ち会える確率25%
マグロが出現したという情報を得るや、前後左右に波がうねる津軽海峡を、一斉に列をなすように何十という数の漁船がマグロを目指して突き進む光景は圧巻! ほかの漁船の邪魔にならないように、それでいて臨場感が伝わるギリギリの距離まで近寄る泉さんの操舵に「おお~ッ!」と、参加者からも歓声があがる。揺れる船上でのハラハラ&ドキドキ体験の共有は、つり橋の理論よろしくカップルにもオススメかも!?
マグロを引き当てた一本釣り漁船は、マグロに引きずられるように洋上を進むらしく、「1隻だけ不規則な動きをするからすぐわかるんだ」と、泉さんが笑いながら話すように、海の男による生解説も、このツアーの醍醐味だ。
ただし、すべてのツアーで漁師とマグロの大格闘が見られるわけではない。当然、マグロをばらしてしまう(取り逃がす)こともあるわけで、マグロが釣れる瞬間に立ち会える確率は約25%。
大間の沖合ではなく、津軽半島側(竜飛崎)にマグロがいることがわかれば、そのぶん、漁船団の数も減ってしまう。大自然という舞台だからこそ“絶対”はありえない。だが、たびたび訪れる“釣れるかも!?”というスリリングな瞬間は、手に汗握る展開になること間違いなしだ。
「NHKの連続テレビ小説『私の青空』(2000年)の舞台に選ばれた大間は、その影響を受け、翌年、釣り上げたマグロが、当時、築地市場でセリの最高値(2020万円)を記録しました。そこから大間という町は変貌していき、観光や食に力を注いでいくようになりました。漁師の存在が、この町にストーリーをもたらし、今も新たな魅力を発信する活力になっているんです」(島さん)
’13年には、築地卸売市場の初セリで、大間マグロが1匹1億5540万円の史上最高値を叩き出したのは記憶に新しいところだろう。それゆえ大間の漁師たちは、“黒いダイヤ”を求めて海に出る。厳しい環境下で釣り上げることを身をもって体験したからこそ、見学後に口にする大間マグロが劇的に美味しい。
ウォッチング後は、別途料金を支払えば、漁港近くにある『浜寿司』で、マグロ料理を堪能できる。マグロのさまざまな部位を余すところなく使って調理した「大間マグロフルコース」(7600円税込み)は、格別。胃袋や血合いの珍味や、メインの小鍋(コラーゲンたっぷり!)、のど肉の焼き物など、刺身だけではない逸品が食べられるのは、目の前でマグロがとれる産地ならでは。
どんな結末が待っているかは予想できないし、2つとない状況下だからこそ、面白い大間マグロ一本釣り漁ウォッチングツアー。
大間の魅力を発信する新たな取り組みは、多くの観光客のハートを一本釣りする日も遠くないはずだ。