「ちっとも思わない。孫がいたことがないからわからない」
親の主語は親である、という当たり前すぎることを、子である私も忘れていました。孫の顔を見せることが親孝行だと思ったら大間違いでした。
働く娘に代わって、孫の世話を押し付けられて、せっかく手に入れた老後の自由な時間を奪われるのは、マジ勘弁。そんな母の思いがひしひしと伝わってきます。すべての女性が子どもや孫を欲しいと思っているわけではないんですよね。
私自身も、本当に心の底から子どもが欲しかったわけではありませんでした。むしろ「本当は欲しくなかったことに気がついた」クチです。
親には親の人生、私には私の人生がある。そこを改めて噛みしめています。
産まない人も産めない人も
不妊治療を経て、私は産めなかったわけですが、今は「産まない人生を選んだ」と言うようにしています。
もしかしたら、「きみは鳥なの?獣なの?」と問われるコウモリのように思われるかもしれません。鳥たちには「翼があるから鳥だよ」と言い、獣たちには「毛が生えてるから獣だよ」と答えたコウモリは、鳥たちにも獣たちにも嫌われて、ハブにされ、その結果、夜だけ飛び回るようになったっつう。
でも、産まない人と産めない人が喧嘩してもしょうがないし、もっと言えば、産んだ人とも、なんら闘う必要もないです。みんな同じ女なんだよね。だから今、問われたら「生き物でーす。みんな同じでしょ?」と答える所存です。
産んだ、産まない、産めないには人それぞれの理由や背景があります。
でも、女であることはみな一緒。いや、男も含めて、全員人間であることは一緒ですよね。誰かに自分の価値観を押し付けることなく、そして、自分の価値観を否定することなく、人にも自分にも嘘をつかずに生きていけたらいいなぁと思っています。
吉田潮(よしだ・うしお)◎コラムニスト 1972年生まれ、千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。テレビ『新・フジテレビ批評』、『みんなのニュース』(ともにフジテレビ)のコメンテーターも務める。また、雑誌や新聞など連載を担当し、著書に『幸せな離婚』(生活文化出版)、『TV大人の視聴』(講談社)ほか多数。新刊『産まないことは「逃げ」ですか?』に登場する姉は、イラストレーターの地獄カレー。公式サイト『吉田潮.com』http://yoshida-ushio.com/