過労死、パワハラ自殺の過酷な実態
過労死弁護団の玉木一成弁護士は、過労死は2つの原因に大別できるという。
「長時間労働によって心臓疾患や脳疾患などにより死亡に至る場合と、長時間労働やパワハラにより精神疾患を発症し、自殺に至る場合があります」
とりわけ後者には、若者層が多いと指摘する。
’08年6月、ワタミフードサービスへの入社から2か月後、森美菜さん(享年26)が自殺した。
弁護側の資料によると、1か月の時間外労働が100時間にのぼり、生活は昼夜逆転。亡くなるまでの2か月で事実上、4日しか休みがなく、うつ病を発症、労災認定されていた。
遺族は「安全配慮義務があった」として、ワタミに対し損害賠償請求裁判を起こした。担当した玉木弁護士は、「パワハラはありませんでしたが、こうした働き方は異常です。それなのに当時のワタミでは、彼女だけが特別な働き方ではありませんでした」と話す。
’15年12月、遺族とワタミの間で和解が成立。ワタミ側は、森さんの自殺は連日の深夜・未明に及ぶ残業などの長時間労働などが原因と認め、謝罪した。これにより、実働時間をタイムカードなどで正確に記録することや残業時間の縮減、基本給と深夜手当金額を分けて社員募集をすることなども改善された。
「長時間労働や昼夜逆転があると、人間の弱いところが破綻します。中高年で言えば心臓疾患や脳疾患。若者で言えば、メンタルヘルスです。新入社員は特に最初の2、3か月のリスクが高い」(玉木弁護士、以下同)
長時間労働の末に自殺に至る場合もあるが、病気の症状としてあらわれることも珍しくない。
森さんの場合、別の新人も配属されていたために、ワタミ側から個人的な要因ではないかと反論された。
「一緒に働いていた人がうつ病を発症してないからといって、当事者特有の問題ではありません。誰もが限界を超えると、うつ病になりえます。自殺ではなく、ギャンブル依存やアルコール依存などで生活が破綻したりすることもあります」