「まったく心配ない。宇野くんの319点を見て、羽生くんも黙っちゃいないでしょう(笑)。彼はきっちりと3種類の4回転ジャンプの精度を上げてきています。
ひとつひとつのジャンプの出来栄え点をどれだけとれるか、完成度の高いプログラムを作ってきている。'15年のGPファイナルでは、2種類の4回転ジャンプをSP2本、フリーで3本決めて、世界最高得点330・43をマークしている。出来栄えと技術ではほかを圧倒しているんです」(佐野氏)
確かに羽生を追いかける若手が4回転の種類や数を増やしても、超えるどころか肉薄できない現実。逆に、彼が五輪用に用意する今季のプログラムでは4回転は3種類で、SPとフリーで7本を予定し、フリーの基礎点は当時より約10点アップ。演技後半に4回転コンビネーションを2本入れてくる点に注目が集まる。
「後半のコンビネーションは基礎点が1・1倍になるので重要ですが、体力的にはすごくしんどい。だから苦しい練習を積んできたと思う。五輪連覇を狙う男としては、やらなくてはいけないことだし、そのカッコいいことが実に似合うよね(笑)」(佐野氏)
追いかける宇野昌磨の成長ぶり
常に高みに挑み続ける羽生。その背中を見続けてきた宇野も、パフォーマンスを一気に跳ね上げている。
「昌磨は“ユヅくんがいるから追いかける気持ちでいられる”って、常に話していますよ。どんなに高得点をとってもチャレンジャーでいられるし、また、ファンからのプレッシャーを感じないですむのも、羽生くんという“絶対王者”が身近にいるからでしょうね」(スケート連盟関係者)
宇野の成長ぶりには、辛口の佐野氏の頬も緩む。
「宇野くんが改善すべきところ? ないですね(笑)。それくらい、いい! 試合後のコメントを聞いていても、非常に自分自身を冷静に見つめている。自己分析も鋭いし、明確です。世界歴代2位の319点にも満足せず“ちょっとばらばらだ”と、先のことをしっかりと見つめていた。やはり羽生くんから学んだんだと思います。身近に金メダリストというお手本がいることは大きいですよ」
練習の虫で、研究熱心なところも、2人の共通項だ。
「宇野選手のスケート靴のブレード(刃)は、ほかの選手と違って、左足はトゥーループのためにかなり内側についており、逆に右足はループが抜けないようにすごく外側につけているんですよ。常識では考えられないことなんですが、4回転を成功させるためにこんな工夫もしているんです」(フィギュア関係者)
若き挑戦者が着々と追ってくる中、絶対王者もまた、熱い気持ちをたぎらせる。