「羽生選手は'15年の世界最高得点のイメージを持って五輪に臨みたいようです。だからこそ、その当時のSP『バラード1番』、フリーは野村萬斎が演じた映画『陰陽師』の劇中曲『SEIMEI』の再演を決めた。

 “新鮮味がない”といった意見もある中、慣れるまでの過程を省けることによって演技を成熟、つまり完成度にこだわった。鼓や笛の音が溶け込む和風調で、'15年当時も欧米のジャッジの反応を危惧する声があったが、思いのほか好評価だったので、満を持して勝負の年に持ってきたのでしょう」(スポーツライター)

 そのこだわりこそが羽生らしさなのかもしれない。それは過去の『ゆづ語録』からも見てとれる。ソチオリンピックの帰国会見で、日本人像について聞かれたときは、

「日本的な文化の素晴らしさを再認識しています。日本国民として恥ずかしくないか、日本人として胸を張っていられるのか、それが一番大事なのではないかと思います」

 また、故郷の東北に対する思いについては、

被災地のことだけは忘れないでほしいと思います。その思いを伝えるためにもスケートをしています。スケートをやっていて本当によかったと思える瞬間です

 と、熱く語ったこともあった。『SEIMEI』を再び演じることについては、佐野氏も太鼓判を押す。

「僕は大賛成ですよ。衣装も和風な感じだけに海外のジャッジも含め、見ている外国の方々がエキゾチックに感じるでしょうからね。この曲を滑れるのは彼しかいない」

 宇野もまた、フリーの『トゥーランドット』は再演だ。しかし、その表現力こそが五輪までの課題だという。

本人も反省し“プログラムがつながっていない”と語っていたが『トゥーランドット』はもっと点数を積み上げられる楽曲です。

 ジャンプとジャンプの間のトランディションと呼ばれる部分や演技に関しては、まだ伸びしろはある。羽生くんの最大のライバルは宇野くんですよ。申し訳ないですが平昌の金と銀は日本がいただきますよ!」(佐野氏)

 慣れ親しんだ楽曲での新プログラム、テクニックの完成度、そしてフィギュアスケートへの情熱。この3つがそろったからこそ、メダルへの期待は膨らむばかりだ。