また、「脂質の摂取量が多いほど全死亡リスクが低い」という結果には驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。「脂質を取るのをなるべく控えましょう」というのが従来の健康指導でした。今もこのように食事指導する栄養士が多いようです。

 でも、前回(「栄養」について知らない「栄養士」が多すぎる)解説したように、「脂肪=悪玉」説は世界的には否定されています。「食事でコレステロールをたくさんとっても、血液のなかのコレステロールが増えるわけではない」ということが最近の研究で明らかにされているのです。

 そこで、2015年2月にアメリカでは、栄養療法の指針が改訂され、食事のコレステロールについては気にしなくていいことになりました。

 日本でも、厚生労働省が「日本人の食事摂取基準」2015年版で、コレステロールの摂取基準を撤廃しました。

 にもかかわらず日本では、相変わらず「脂肪を減らしてその分、炭水化物を増やしましょう」という誤った指導が堂々と行われているのが現状です。早く認識を改めていただきたいものです。

繰り返される根拠なき糖質制限批判

 また、今回の研究報告とは逆に、「糖質制限は危険」などと“警告”する医師・専門家が日本ではいまだ見受けられます。

 でも、ほとんどの方が過去の常識にとらわれ、単に不勉強なだけです。現在では、日本糖尿病学会の理事長も糖質制限を取り入れるなど、学会の主流派の方々も変わりつつあります。最新の栄養学を勉強していただければ、糖質制限食の有効性と安全性がご理解いただけるはずです。

『江部康二の糖質制限革命』(東洋経済新報社)江部康二著 ※記事の中の写真をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします
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 しかしながら、まだまだ一般の医師らには理解が十分進んでいないのが現状のようです。

 先日も、ある週刊誌で「糖質制限ダイエットで総死亡率やがん死亡率が増える」という記事がありました。いつものように不勉強な医師による記事だろうと思って見たら、ある高名な医師のインタビューだったので驚きました。

 でも、その内容はというと、根拠としている論文は2010年と古いものでした。しかも、その中で「糖質制限食」としているものは、到底「糖質制限食」とは呼べないくらい糖質が多い食事だったのです。

 以前、「糖質制限ダイエットの恐ろしい『落とし穴』」でも解説したように、自己流の誤った糖質制限を行った場合の危険性はあります。でも、正しい糖質制限食はきわめて安全で理にかなった健康食です。

 日本の医師・専門家も、世界的な潮流に目を向けて、「正しい糖質制限食」の啓蒙に力を入れていただきたいと願っております。