都内に住む鈴木恵子さん(仮名)も、シェルターへの不信感を今も引きずっている。
5年間の交際を経て結婚したが、すぐに夫は暴力をふるうようになったという。
「出産して育休が終わり、職場復帰する直前でした。家事や育児を手伝ってと言ったら暴力をふるいはじめて……」
鈴木さんは鼻を骨折。警察ざたになり、夫は逮捕。夫の報復が怖く、福祉事務所に相談し、1歳の子どもとシェルターに保護された。生活に不満はなかったが、職員の態度に不信感を強めた。
「カウンセラーには、夫の行動はDVだと言われるばかり。DVは治りませんから離婚したほうがいいと、とにかく離婚をすすめられました」
鈴木さんの不安な気持ちは置き去りにされ続け、
「シェルター専属の弁護士も慰謝料はあまり取れないですねとお金の話ばかり。弁護士さんも仕事なのでしょうけど……」
施設の職員が「ここを出た人はみんな元気にやっている」と勇気づける言葉や「新しい街も住めば都」と慰める言葉も、
「他人事のような言葉に、余計に孤独を強く感じました。私は実家で虐待を受けていたため、家族への憧れがとても強かったのです。だからこそ家族が壊れてしまい、ダメな家族という烙印を押されたようで絶望していました。すごく不安なのに誰も真剣に話を聞いてくれず、不安で押しつぶされそうな毎日でした」
と、そのつらさを理解してほしかったと話す。皮肉にも一番話を聞いてくれたのは、
「警察に拘留されている夫が私選で雇った弁護士さんでした。夫は“起訴しないように妻に言ってくれ”と弁護士さんに話していたようですが、弁護士さんは“あなたが変わらなければいけないんですよ”と怒ってくれました。私の話も本当によく聞いてくれて、家族のことを一番考えていたように思います」
公的シェルターに滞在できるのは原則2週間。鈴木さんはその後、民間のシェルターに半年間滞在した。夫は起訴され執行猶予つきの判決が下された。
「夫も釈放され、“俺が悪かった”という手紙なども送ってきていましたし、私も子どもをひとりで育てる勇気もなかったので、夫のところに戻ることに決めました」
その旨を区の福祉事務所の相談員に告げると、相談員からは驚きの言葉が。