刑期を終えても、プログラムを継続することが重要

 保護観察所のプログラムは短い。受講後も効果を維持させるのが課題だ。出所後、自身の行動を見つめていくかも問われる。

「都内某所の更生保護施設には性犯罪の加害者も入所しています。そこで専門のプログラムを行っていますが、なかなか医療機関にはつながりません」

 そう話すのは、大森榎本クリニックで精神保健福祉士・社会福祉士を務める斉藤章佳さんだ。

斉藤さんは痴漢常習者を性依存症ととらえた専門治療プログラムも担当
斉藤さんは痴漢常習者を性依存症ととらえた専門治療プログラムも担当
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「更生保護施設にいる人の関心は就労です。希望者はクリニックにつながりますが、施設からつながった人は非常に少ない」(斉藤さん、以下同)

 同クリニックで、希望者に対して性犯罪者の「地域トリートメント」を始めたのは’12年前。去年の年末までに延べ1116人が受診したが、1回の受診で半分以上は来なくなる。3年以上の長期定着群は32人。

「保険証を持って、医療費を払い続けるには動機づけが必要です」

 受診後の定着率を上げるにはどうすればいいのか。

「加害者家族がクリニックの家族支援グループとつながると定着率が高い。家族へのサポートを強化する必要があります」

 クリニックでは、更生保護施設のプログラムのほか、グループワークをしたり、リスクマネジメントプラン(RMP)を作成したりする。受刑者との手紙のやりとり、被害者の体験談を聞くプログラムもある。自身の問題を整理し、再発防止のためのスキルも磨く。

 裁判前に刑事手続きの段階から介入する「司法サポートプログラム」もある。斉藤さんは年10回ほど性犯罪の裁判に出廷、冒頭の裁判でも証人として証言した。

 RMPはクリニックに来て作成するが、同プログラムでは斉藤さんが警察署や拘置所、刑務所にも足を運ぶ。加えて手紙のやりとりで、犯行のパターン、認知の歪みを洗い出す。

 再犯しないためには、刑期を終えても、医療機関とつながりプログラムを継続することが重要。だが現在は、あくまでも加害当事者の意思に任されている。経済的な事情も左右する。加害者を生み出さない取り組みの強化が求められる。

◎取材・文/渋井哲也
ジャーナリスト。長野日報を経てフリー。若者の生きづらさ、いじめ問題などを中心に取材。近著に『命を救えなかった─釜石・鵜住居防災センターの悲劇』(第三書館)

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