座間事件の影響か
その理由を、犯罪心理学者で東京未来大学こども心理学部長の出口保行教授に尋ねた。
「外に遺棄すれば発覚するかもしれない。いつかバレてしまうかもしれないと強い恐怖を感じていたのでしょう」
と指摘したうえでの読み解きは、神奈川の座間9遺体事件の影響だ。
「自首をするのは難しい。自分から刑罰を受けにいくわけですし、社会生活だって失う。よほどのきっかけがないと一歩を踏み出せない。連日報じられた座間市の事件を見て、自宅に遺体を置いておけば、何かしらのきっかけで踏み込まれるかもしれないと自分と重ねたところがあったのだと思います。
また、非常に強い罪悪感もずっと持っていた。だからどこかで、自分の犯罪が暴かれて贖罪したいという気持ちがあったのでは」
斉藤容疑者は取り調べに対して、「金銭的な余裕がなく、子どもを育てられないと思った」と供述しているが、出産前にそう見通せないところが致命的だった。
出口教授が再び指摘する。
「乳児の殺害遺棄事件を起こした女性を分析したことがありますが、共通するのは時間的な展望がないまま出産に至ってしまうこと。つまり自分の先々を予想して、それに対処する行動をとることができない。容疑者も社会生活を営むうえで十分な生活設計ができない人のように感じます」
教授の指摘を裏づけるように、
「生活は苦しかったはずやのに、パチンコ好きやった。子どもほったらかしてパチンコ行ってな。それでいて、元夫はパチンコばっかりするから別れたって。子どもが夜遅く“うちのお母ちゃん、知らん?”ってよう探してた。パチンコ行ってるとも言えんしな」(近隣女性)という証言、
「1か月200円、年間2400円の自治会費を、たいてい一括で払うんやけど、3か月ごとに分割で払ってな」(近隣の男性)という証言が次々と出てくる。どれも斉藤容疑者のいいかげんな“素顔”を裏づけるものばかり。
わが子の遺体をコンクリ詰めにし、20年以上も良心の呵責に苦しみ続けた斉藤容疑者。今やっと、子どもたちの声なき声が届いたのか。