Mー1グランプリ第13代目のチャンピオンに輝いたのはとろサーモンだった。結成15年目。今年が最後のチャンスだったが、見事、エントリーした約4000組のお笑い芸人の頂点に立つことに。
「Mー1制覇は、お笑い芸人にとってはオリンピックの金メダル以上の価値があります。タイトル獲得から一夜明けると生活は一変します。マネージャーの携帯電話は鳴りやまなくなってパンクしてしまうんですよ」(芸能プロ関係者)
テレビ出演、イベント、CMなど仕事のオファーが激増し、マネージャーも所属事務所も対応できなくなってしまうというのだ。
当然、収入も激増、本人たちも戸惑ってしまうほどのバブルが到来する。
「結成して何年、苦節何年というベテランがタイトルを取ることもありますが、彼らがすべて売れっ子というわけでもありません。
月収数万円にも満たなかった人たちもいるわけで、その人たちが想像を絶するほどのギャラを急に手にするようになるんですから、まさに“ドリーム”ですよ」(スポーツ紙記者)
テレビの出演料などは通常2、3か月後に振り込まれるため、今は馬車馬のごとく働くだけで、実感が湧いてこない彼らだが、数か月後にはチャンピオンとなったうま味を十分に堪能することができるようになる。
そう簡単には生き残れない
しかし、問題はそれが長続きするかどうかだ。またMー1チャンピオンになったからといって必ず売れるということもない。
「歴代チャンピオンはみなさんタイトル獲得後も活躍が続いていますが、9代目のパンクブーブー、10代目の笑い飯、12代目銀シャリはテレビで見る機会が減ったように思います。またコンビの片方だけが活躍しているという例もありますね」(テレビ誌記者)
明暗を分ける理由はどこにあるのか。
「今の時代、漫才コンビが漫才を披露できる場所はそうそうありません。テレビ番組はほとんどなく、劇場ライブくらいでしょう。ですから、彼らがテレビで活躍できるとしたらバラエティー番組くらいしかありません。
そこで必要になるのが“トーク”です。フリートークが面白くないとオファーが来ないですね。最近はワイドショーなどにコメンテーターとして呼ばれる芸人もいて、やはり気の利いたトークを求められるので、それができないと生き残るのは難しいですね」(芸能プロ関係者)
話芸を見せる漫才師なのだから、本来は話術も達者なはずだと思うのだが……。
また、ただでさえ活躍の場が少ない上に、お笑い芸人が増加したことで生存競争は過酷になっているという。
「吉本や松竹芸能だけじゃなく大手から弱小まで、芸人を抱える芸能事務所が増えました。
今回は漫才コンビだけで4000組以上のエントリーでしたが、ピンや3人以上のグループも入れたら相当な数になります。
それに上がつかえていますから、下から這い上がるのは大変なことですよ」(前出・スポーツ紙記者)
トロは、魚や肉の脂質の多い部位を指す言葉。高級とされるが、実は劣化も早いという。チャンピオンになっても前途は多難だ。
<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。