千葉県松戸市の小学3年生でベトナム国籍のレェ・ティ・ニャット・リンちゃん(当時9)が殺害されたのは3月のこと。
保護者会会長・渋谷恭正被告(46)の逮捕から約半年後の9月末、父親のハオさん(35)は生前のリンちゃんを撮影した動画などをユーチューブに複数アップし、なかには小さな棺に横たわるリンちゃんの痛ましい動画も含まれている。
ハオさんはナレーションで、
《みなさん、見てください。こんな、かわいいリンちゃんですよ。どうして殺されないといけないですか》
と訥々と語りかける。
カメラは棺の中を映し、
《これが最期のリンちゃんの姿ですよ。……犯人にもリンちゃんの最期の姿を見てもらってほしいです》
とハオさんは慣れない日本語で言葉をつなぐ。こんなに悲しい動画は見たことがない。
署名は全世界で3万人以上に
渋谷被告の裁判はまだ始まらない。近隣住民らによると、IT関連の仕事を休職しているハオさんは妻子とベトナムに帰国中という。
留守宅を預かって仏壇にお水やご飯を供えている友人の渡辺広さん(45)は、ハオさんが動画を公開した理由についてこう話す。
「渋谷被告の死刑を求める署名を募っており、動画はその一環。父親として何ができるかを突き詰めているんです」
逮捕直後、ハオさんは「犯人に会って話をしたい」と言っていた。
「しかし渋谷被告は犯行を認めず、黙秘を通していますからね。遺族に謝罪のひと言もない。そんななかでいま自分に何ができるのかを問い続けていった結果です。
10月に数日、日本に戻り、その後ずっとベトナムにいるので、日本の保護者などの署名はどのくらいかわかりませんが、ベトナムをはじめ全世界で3万人以上にもなっているそうです」
一方で、ハオさんにはそうとうな葛藤があったと渡辺さんは代弁する。
「外国人である自分がこんなことをしたら日本人の反感を買うのではないか、日本にいる外国人の印象が悪くなるのではないか、と苦悶した末に署名活動を始めました」
両家は家族ぐるみの付き合いをしてきたという。
「お母さんは里帰りしている最中に事件が起きたので“守ってあげられなかった”と自らを責める気持ちが強い。
弟さんはまだ小学校に入る前なので“リンちゃんはいつ帰ってくるの?”と両親にしきりと聞くそうです。毎日会っていたリンちゃんに会えないストレスからか、幼いのにすっかりやせてしまった。仲のいい姉弟でしたからね。見ていてかわいそうなくらい」と渡辺さんは目頭を押さえた。