「ずっと自分の子どもが欲しくて、子どもがいる人生しか考えてこなかったけど、結局ダメでした。いまでも子どもが欲しかった気持ちは、胸の奥にささっています。事情を知らないとはいえ、『子どもは?』と聞かれるたびに胸が痛みました」

当記事は「東洋経済オンライン」(運営:東洋経済新報社)の提供記事です

 結婚生活18年目となる久保田初美さん(仮名・50歳)は、子どもを持つことへの苦悩の連続だったとため息をもらす。

「お子さんは?」

 結婚している女性に対する何げない一言が、地雷を踏んでいることがある。子どもを産んだか、産んでいないか。そのことは女性にとってセンシティブな問題で、「ご出身は?」と同レベルでは聞かれたくない質問だと、理解されていないと感じる。

「子どもを産むのは当たり前」との認識はまだ根強い

 多様性の時代といわれながらも、「結婚したら子どもを産むのは当たり前」との認識は、まだ根強い。子どもを産まなかった女性たちは、現代社会のなかで生きづらさを感じているが、そのことに気づいている男性はどれくらいいるだろう。

子どもがいない女性たちは、自由に好きなことをして楽しそうにしている」

 子どもを持ち、家族としての責任を背負っている人から見れば、そう映ることもあるかもしれない。子どものいない女性たちは、普段は本音を隠して過ごしているため表面上はわかりづらいが、子どもを持てなかったことに傷ついている人は少なくない。

「頑張って続けていれば、いつか妊娠できると信じていました。不妊治療を続けることは家計にも大きな負担で、貯金も減っていきましたが、あきらめたくない。絶対子どもが欲しいと意地になっていました」

 不妊治療に300万円以上を費やした会社員の香川由美子さん(仮名・49歳)は、肉体的、精神的、金銭的の三重苦を背負い、子どもを持てなかったことに対して、うまく気持ちを切り替えられなかったと嘆く。